国内損害保険市場でトップクラスのシェアを占める損害保険ジャパン。同社は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、業務継続と社員の安全の両面から2020年3月から4月にかけて約15,000人規模のテレワークをスタートした。全社員を対象とする中で、課題となったのは社内デスクトップPCの利用が基本となる保険金サービス部門などへの対応だった。2020年2月、同社は自宅PCから社内PCの遠隔操作を行うPC遠隔制御ソリューション「RemoteView」を導入。採用の理由は、自宅PCにデータを残さないセキュリティ面に加え、社内PCにインストールするだけで利用できる導入のしやすさを高く評価したからだ。また、コールセンター業務の在宅勤務も実現。RemoteViewの導入をきっかけに、同社の働き方改革は大きく前進した。
- 社内デスクトップPCで業務を行っている部門の在宅勤務を実現したい
- 新型コロナウイルス感染症拡大への対応のため短期間で導入したい
- 重要な情報を扱うことから在宅勤務でもセキュリティを確保したい
全社員を対象に約15,000人規模でテレワークを開始
課題となったのはVDIに適していない業務への対応
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しブランドスローガン「安心・安全・健康のテーマパーク」の実現を目指すSOMPOグループ。同グループの中核を担い、国内約2,000万人のお客様基盤を有する損害保険会社が、損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)だ。
ライフスタイルの多様化、デジタル化による産業構造の変革が進む中、損保ジャパンは法人向け安全運転支援サービス「スマイリングロード」、自動車事故のAI自動修理見積サービスなど、デジタル技術を活用しパートナーと共創することで、新たなお客様接点の創出や付加価値の高いサービスの創造にチャレンジしている。
時代がどんなに変わっても、同社に息づく創業の精神は変わらない。同社のルーツは、1888年に誕生した日本初の火災保険会社「東京火災」だ。「世のため、人のため」に「事故・災害からの再起を後押しする」という強い思いは、今もDNAとして受け継がれている。「私たち保険会社は、災害やパンデミックであっても、お客様のもとに1日でも早く保険金をお届けしなければなりません。危機に際して迅速に動き、お客様の役に立つことが保険会社の責務です」と、損害保険ジャパン IT企画部 システム管理グループ グループリーダー 名取政人氏は話す。
同社は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、業務継続と社員の安全の両面から2020年3月から4月にかけて全社員を対象に約15,000人規模でテレワークを開始。同社のテレワークへの取り組みは早く、2012年には制度化しITインフラの整備を進めた。営業や本社社員が利用するPCは、デスクトップ環境を仮想化しサーバ上で稼働させることで、PCにデータを残さないVDI(仮想デスクトップ)を採用し、社員が自宅でも安心・安全に業務が行える環境を整えていた。
「事前に制度もインフラも整備できていたことから、在宅勤務への移行はスムーズに進みました」と名取氏は話し、こう続けた。「しかし、緊急対応だったことから、克服すべき課題もありました。保険金サービス部門などの業務がVDIに適していなかったのです」
リモートデスクトップ製品は導入しやすさとセキュリティを重視し「RemoteView」を採用
同社の保険金サービス部門や経理部門、人事部門などにおいて、それぞれの業務システムにアクセスし利用できるのは、部門専用の物理端末だけだ。例えば、自宅PCからVDIで保険金サービス部門のシステムにアクセスすることはできない。VDIの代替手段として、リモートデスクトップを検討したと名取氏は話す。「リモートデスクトップは、自宅PCから社内の物理端末を遠隔操作できるため、保険金サービス部門も社内にいるのと同様に業務を継続できます。また、自宅PCにデータを残さないため、在宅勤務における情報漏えいのリスク回避も可能です。さらに短期間導入や優れたコストパフォーマンスも大きなメリットです」
2020年2月、新型コロナウイルス感染症が国内で急速に拡大する中、一週間で導入するリモートデスクトップ製品を決定したと名取氏は振り返る。「3つの製品に絞って検討した結果、導入しやすさとセキュリティを重視し、RSUPPORTのPC遠隔制御ソリューション「RemoteView」を採用しました」
導入しやすさについて名取氏は説明する。「社内PCにRemoteViewをインストールするだけで利用できます。自宅PCへのインストールは不要です。コロナ禍対策として在宅勤務用に短期間で何千台もPCを支給し、利用可能な状態にしなければなりませんでした。インストールや設定に手間がかからず、既存システムの変更・改修も必要ないという点は、採用の大きなポイントとなりました」
セキュリティの観点では、ウイルス感染を防止する画面転送の仕組みも高く評価したと名取氏は話す。「暗号化によりセキュリティを確保した上で、インターネットを介して社内PCの画面情報と自宅PCの操作情報を、RemoteViewの中間サーバ上に持ってきて処理を行います。自宅PCと社内PCが直接つながることがないため、ウイルス感染を防止できます」
RemoteViewの採用を決定して2週間後には利用を開始。在宅勤務に向けた業務プロセスの見直しもあったことから、順次利用者を増やし、現在は10,000人ユーザーを登録している。「RemoteViewを使う上で、ユーザーに混乱はありませんでした。社内PCにつなげてしまえば、オフィスにいるのと同じ感覚で業務が行えるからです。また、リモートアクセス時に社内PCの画面が自動的に動くため、周囲の目を引くことがないように画面を消す機能を利用する社員もいます」(名取氏)
RemoteViewとPBXを組み合わせてコールセンター業務の在宅勤務を実現
コロナ禍において、損保ジャパンは一般的にテレワークが難しいとされるコールセンター業務にも在宅勤務を適用した。コールセンターは、事故情報や契約情報などセンシティブな個人情報を扱うため、強固なセキュリティが求められる。また、オペレーターは顧客の厳しい声に接する機会も多いことから、周囲のフォローも不可欠だ。同社は、情報漏えい防止とオペレーターのサポートの両面を実現するために、RemoteViewを導入した。
「お客様からコールセンターにかかってきた電話を、PBXにより内線電話のかたちで自宅にいるオペレーターのスマートフォンに転送し、オペレーターはお客様と会話します。会話は録音されるとともに、管理や指導を担うスーパーバイザーも同時に聞いています。また、オペレーターはお客様と会話をしながら、RemoteViewにより社内システムにアクセスし、必要な情報の確認や、スーパーバイザーからのチャットによる助言を受けて回答品質の維持を図っています」(名取氏)
RemoteView導入をきっかけにテレワークによる働き方改革が大きく前進
損保ジャパン本社(東京都)では、コロナ禍の緊急事態宣言のもと2割が出社、8割が在宅だった。「コロナ後も働き方改革を推進するために、当社の働き方の中に、在宅やサテライトオフィスなど場所を選ばず業務を行うテレワークを組み込んでいく方針となっています。RemoteViewは、二要素認証によりスマートフォンでもセキュアに利用できることから、手軽に社内PCへリモートアクセスし、移動時間や待ち時間の有効活用が可能です」(名取氏)
今回、損保ジャパンのRemoteView導入では、SOMPOグループのICTを担うSOMPOシステムズと、RemoteViewの販売・技術支援に携わる丸紅情報システムズが、提案から導入、運用までを一体となって行った。「損保ジャパンにおけるRemoteViewの大規模かつ短期間導入における成功の舞台裏では、SOMPOシステムズが丸紅情報システムズの技術支援を受け、RemoteViewを導入し蓄積したノウハウがベースにありました。また、コロナ禍であってもSOMPOシステムズが在宅勤務により開発や運用業務を行えたことで、RemoteView導入はもとより、グループの様々なICTプロジェクトが遅延することなく進行できたメリットも大きいです」(名取氏)
RemoteViewの導入効果について名取氏は「コロナ禍でも業務を止めることができない保険金サービス部門はもとより、決算期の経理部門や年度替わりの人事部門などに対し、社員の安全を守りながら業務を継続できる環境を提供できました」と話し、こう強調した。「RemoteViewの導入は、当社の働き方を変えるきっかけになったことが最大の成果です。これまで在宅勤務が難しいと考えていた保険金サービス部門やコールセンターにも適用できたことで、全社員を対象とするテレワークによる働き方改革が大きく前進しました」
今後の展望について名取氏はこう語った。「当社においてテレワークの普及・定着が進むことで、テレワーク基盤の重要性は一層高まっていきます。当社の多くの社員が利用するため、数分止まっただけでも大きな影響が生じることから、止められないシステムとして安定稼働がより求められます。また、“つながって業務ができてよかった”から、“もっと快適に業務を行いたい”といった利用者のニーズに応えることも今後の課題です。丸紅情報システムズにはRemoteViewの最新機能を活用した利便性の向上や、コストと快適性の両面から回線の最適化を含めた提案も期待しています」
130年以上にわたり日本の社会や暮らしを支え続ける損保ジャパン。コロナ禍における業務継続性から生産性、創造性の向上へ、丸紅情報システムズはRemoteViewを通じて同社の働き方改革を支援していく。