コロナ禍においてMicrosoft 365の導入拡大が急速に進む中、データのバックアップが課題となっている。クラウドサービスでは、データ管理の責任はユーザーにあるため、操作ミスなどで消失したデータに対しクラウド事業者に責任を問えない。そのため、データ保護の観点からユーザーがバックアップ対策を講じることが重要となる。2020年8月、芝浦工業大学は、Microsoft 365のデータをクラウドストレージにバックアップするNetApp SaaS Backup for Microsoft 365を導入した。理由について同大学 情報システム部 情報システム課 佐藤剛氏は「在宅勤務やオンライン学習では、OutlookやTeamsなどアイテム単位でのバックアップ、リストア(復元)が必要なのです」と強調する。ストレージ込みの容量無制限ライセンスを利用することで容量不足も解消できる。ニューノーマル(新たな日常)な教育・研究環境で、データ保護により業務や学習の継続性を高めていく。
- 在宅勤務やオンライン学習で利用するMicrosoft 365のデータをバックアップしたい
- 会議・授業録画などによりデータ量の急増が想定されるTeamsや日々の業務に欠かせないOneDriveのバックアップにおいて、容量不足のリスクを解消したい
- コスト抑制と共に、随時追加される最新機能の利用などサービスを最大限に活かしたい
コロナ禍の在宅勤務やオンライン学習に伴いクラウドサービスの利用が拡大
「The pessimist sees difficulty in every opportunity. The optimist sees opportunity in every difficulty. (悲観主義者はあらゆる好機の中に困難を見る。楽観主義者はあらゆる困難の中に好機を見る)新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下の2020年4月27日に、芝浦工業大学 学長 村上雅人氏が学生に宛てたメッセージの最後に添えたのは、英国首相ウィンストン・チャーチルの言葉だった。
建学の精神「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」の下、日本はもとより世界を舞台に活躍する理工学人材を数多く輩出している芝浦工業大学。学生・大学院生約9,000人が学ぶ理工系総合大学として、ものづくりの幅広い分野にわたる4学部16学科1課程、1研究科9専攻、250以上の研究室を有する。また、2027年の創立100周年にアジア工科系大学のトップ10入りを目指し、グローバル教育・研究の強化など大学改革も進行中だ。
コロナ禍であっても、学生の学びや大学改革の歩みは止めることができない。同大学は、「逆境を順境に変える」ために、ニューノーマル(新たな日常)に対応した教育環境の整備に力を尽くしている。学生のオンライン学習や教職員の在宅勤務の実現で積極的に活用しているのが、クラウドサービスだ。
同大学では、感染拡大防止のために2020年4月から学内施設を閉鎖し、入学手続きや履修届など事務処理はもとより、2020年度前期・第1クオーター開始から学部と大学院の全ての授業をオンラインで実施した。急遽、Web会議サービスZoomや、コラボレーションツールMicrosoft Teams(以下、Teams) を利用したオンライン学習への対応に迫られたが、情報システム部、教職員が共同で事前準備やサポートを行ったことで順調に進行できたという。
また、コロナ禍以前から教職員と学生にMicrosoft 365を支給。2020年度の新入生も利用できるよう整え、パソコンを用意できない学生には貸し出しも行った。
コロナ禍による在宅勤務やオンライン学習の常態化に伴い、Microsoft 365やTeamsの利用シーンが広がっていると佐藤氏は話す。「日常業務に必須のMicrosoft 365は、在宅勤務でも引き続き利用しています。Teamsは、オンライン授業でのグループ学習・課題提出、産学連携における企業との打ち合わせなど様々な教育・研究の場で利用頻度が高まっています。教職員からも、コロナ禍対策をはじめ様々なプロジェクトでTeamsを使いたいという要望が急速に増えています」(佐藤氏)
日々の業務や教育でMicrosoft 365の重要性が高まる中、データのバックアップが大きな課題となった。クラウドサービスにおいて、データ管理の責任はユーザーにあるからだ。
データ保護と業務継続の観点からクラウドでもバックアップは必要不可欠
クラウドサービスを利用した際に生じるデータは、クラウド事業者が運用するシステム上に蓄積されるため、「クラウドではデータのバックアップは不要」と誤解するユーザーも多いのではないだろうか。操作ミスやマルウェア攻撃などに起因するデータ消失はもとより、クラウドサービスの中断に伴い、結果として生じるユーザーの損失もクラウド事業者に責任を問えない。データ保護や業務継続の観点から、クラウドにおいてもオンプレミスと同様にバックアップは必要不可欠だ。「日々の業務では、“このメールだけ、このファイルだけ”など、アイテム単位でリストアしたいといったニーズに応えるバックアップが必要なのです」と佐藤氏も指摘する。
2020年8月、同大学はMicrosoft 365のバックアップに、NetApp SaaS Backup for Microsoft 365を導入した。Microsoft 365のデータをAmazon Simple Storage Service(S3)などのクラウドストレージにバックアップする同製品の導入は、コロナ禍以前から決まっていたという。オンプレミスでマイクロソフトのファイル共有・情報共有サービスSharePointをバックアップしていたNetApp製品の保守サポート終了への対応が、今回導入のきっかけとなった。
「2019年に行った次期バックアップツールの選定では、運用負荷の軽減を図るべく、オンプレミスからクラウドサービスの利用に切り替えることを前提条件としました」と佐藤氏は話す。情報収集では、これまでさまざまなNetApp製品の導入支援で信頼関係を築いてきたMSYSが頼りになったという。「MSYSからNetAppの新製品や技術情報をいち早く提供してもらっており、次期バックアップ製品に関してもMSYSに相談していました。NetApp SaaS Backup for Microsoft 365は、クラウドサービスを利用してバックアップするという本学の条件を満たしていたことから、MSYSに見積もりの提示をお願いしました」
他社製品との決定的な違いは使いやすさ
MSYSのアドバイスでコストの最適化を実現
同大学は、2020年1月から約一カ月間、NetApp SaaS Backup for Microsoft 365のPoC(Proof of Concept、概念実証)を実施。SharePoint、Teams、電子メールのサーバソフトウェアExchange、オンラインストレージOneDriveに関して、アイテム単位でのバックアップ、リストアの検証を行い、問題がなかったことから採用を決断した。製品選定では、他社のクラウドサービスも検討したと佐藤氏は明かす。「他社製品との決定的な違いは、実績に基づく信頼感です。これまでもオンプレミスでNetApp のバックアップ機能を利用していました。PoCによりオンプレミスと同様にバックアップが行えることが分かり、安心して利用できる点を高く評価しました。ストレージベンダーが提供するクラウドサービスだけあって、使いやすさにアドバンテージがあると思いました」
導入も容易だったと佐藤氏は話す。「NetApp SaaS Backup for Microsoft 365の画面からログインして設定するだけです。本学の場合は、導入時にクラウドストレージ側の設定を切り替える必要が生じたため、NetAppのエンジニアにオンラインでサポートしていただきましたが、実質1時間もかからず導入できました。また、バックアップのスケジュールも一度組んでしまえば自動的に実施されるため手間はかかりません」
同大学の全教職員が導入対象となるため、コストの抑制も求められた。「MSYSからライセンスなどに関するアドバイスをいただき、コストの最適化も図れました」(佐藤氏)
容量無制限のバックアップが
在宅勤務やオンライン学習の継続性を支える
2019年度中に製品の採用を決断したことが、コロナ禍の業務や学習の継続性を高めることにつながっている。同大学におけるNetApp SaaS Backup for Microsoft 365によるバックアップは、2020年8月に事務職員用、同年11月に教研用が本格的にスタートした。急増するバックアップデータ量にも全く不安はないと佐藤氏は話す。 「会議や授業の動画、画像を含むレポートなどを扱うTeamsや、日々の業務で利用するOneDriveのデータを、オンプレミスで全てバックアップを取るのは現実的ではなく、従来のままでは苦労したと思います。本学はNetApp SaaS Backup for Microsoft 365の導入において、容量を気にすることなく無制限で利用できるストレージ込みのライセンスを導入しています。今後、Teamsのさらなる利用拡大が想定される中、データの保全面はもとより、バックアップデータ容量の調整なども必要ないため、運用負荷の軽減も図れます」
Teamsのバックアップを行う場合、容量だけでなく仕組みを理解するのが難しいと佐藤氏は話す。「Teamsは、利用する機能によってSharePointやOneDriveなどにデータが分散保存されるため、Teamsのバックアップは容易ではありません。NetApp SaaS Backup for Microsoft 365は、Microsoft 365を全てバックアップできるため分散保存されたデータのバックアップ、リカバリーも簡単にできます」
さらに、検索もしやすいと佐藤氏は付け加える。「バックアップ時点でさまざまなインデックスが生成されるため、スピーディーに検索できます。またExchange、SharePoint、OneDriveのバックアップデータは、時間範囲を選択して参照することも可能です。少人数運用の本学情報システム部でも、ユーザーからのデータ消失やリストアの問い合わせに対し、すぐに検索し迅速に対応できます」
ITインフラ環境の変化に応える
MSYSの先進的な提案に期待
NetApp SaaS Backup for Microsoft 365は、機能追加によるアップデートと運用負荷の軽減にも大きなメリットがあるという。「クラウドの利点を活かし、今後も利便性の向上とともに、Microsoft 365の新機能への対応も期待しています。またオンプレミスでバックアップを行っていたハードウェアの運用管理やチューニング作業もなくなったことにより、負荷が軽減し人材の有効活用も図れます」(佐藤氏)
同大学は、2020年度後期もオンライン学習を主軸とし、順次対面学習も行っていく予定だ。また、2021年度から入学時にノートパソコンの購入によるBYOD (Bring Your Own Device、私物端末の利用)を導入する計画となっている。「未だに新型コロナウイルス感染拡大の出口は見えませんが、終息したとしてもコロナ禍以前の教育・研究の在り方や手法には戻れないと思います」と佐藤氏は話し、今後の展望について述べた。 「BYODにより学内、学外を問わず学べる環境の実現は、学生一人一人の学習機会の拡大につながります。またTeamsの活用により、各部署間はもちろんのこと事務職員と教員の間でのファイル共有や、学外とのコラボレーションを促進することで、さらなる効率化やイノベーション創造の可能性を広げます。今後、ニューノーマルな教育・研究において、重要データの保護を目的としたバックアップのニーズはますます高まっていきます。MSYSには情報提供やサポートはもとより、本学の視点に立ち、大学改革の推進に貢献する先進的な提案を期待しています」(佐藤氏)
コロナ禍からニューノーマルへ、「世界に学び、世界に貢献する理工系人材の育成」を目指す芝浦工業大学の歩みを、これからもMSYSは先端ITを活用したソリューションの提供を通じて支えていく。