文系総合大学の札幌学院大学は、新札幌キャンパスの開設において丸紅情報システムズ(以下、MSYS)が提案したExtreme製品を導入し、先進的ネットワークを構築した。開かれた教育を目指す同大学は、無線LAN規格Passpoint(パスポイント)対応「ExtremeWireless」を採用し、新キャンパスで市民が利用できるセキュアな公衆無線LANサービスを提供。また、有線LAN「Extreme Fabric Connect」によるネットワーク仮想化で、冗長性とともに江別キャンパスからの容易な運用を実現。同大学は、物理的な距離を感じさせないMSYSのサポート力と、現地施工会社との連携などマネジメント力を高く評価した。
- 開かれたキャンパスとしてキャンパス無線LANを市民に開放したい
- 江別キャンパスから新キャンパスのネットワークの運用を容易かつ確実に行いたい
- 建設会社、各システムベンダーなどが参画するプロジェクトをスムーズに進行し納期を厳守したい
01[導入の背景]
地域社会と共生する学びの場へ
市民にキャンパス無線LANを開放
2021年に、70年以上の歴史を有する札幌学院大学は、変化の時代に応えるべく、リブランディングを実施。新タグライン「One life, Many answers」には、“挑戦を繰り返し、答えを見つけよう”とのメッセージが込められている。また、オープン・エデュケーション(開かれた教育)を目指す新札幌キャンパスの開設を機に学部・学科を改編し、現在、心理学部、人文学部、法学部、経済経営学部の4学部7学科と3研究科を有する。
2021年4月に誕生した新札幌キャンパスのコンセプトは、「多様なこと・ひと・もの(Diversity)」との「協働(Collaboration)」である。新キャンパスで同大学は、教育と社会をつなぎ、地域住民や地元企業と協働で課題を解決し、地域社会と共生する学びの場へと進化する。先進的かつ開かれたキャンパスを象徴するのが、キャンパス無線LANの市民への開放だ。
「新校舎には、図書館、カフェレストラン、多目的ホール、産学連携センターなど市民が利用できる設備が設置されています。市民の利便性と情報活用の促進を目的に、新校舎において市民へのセキュアな公衆無線LANサービスの提供が求められました。重要なポイントとなったのが、無線LAN規格Passpointへの対応でした」と、札幌学院大学 情報処理課 原田寛之氏は話す。
02[導入のポイント]
Passpoint対応、Wi-Fi 6対応に加えMSYSの提案力とサポート力を評価
フリーWi-Fiのセキュア化と大規模ローミングの実現をテーマとする「セキュア公衆無線LANローミング研究会」とそのサービスである「Cityroam」に同大学も参加し、原田氏はローミングに関する研究を行っている。「現在世界中で、公衆無線LANに802.1X認証を導入してセキュリティを高め、さらにその基盤を相互に接続することで、利用者がSSID(Service Set Identifier)を気にすることなく、従来使用している様々な資格情報を利用可能な、安全な自動接続サービスを実現しようという試みが進んでいます。この中核技術が、Passpointです。既に世界規模のオープンなローミング基盤としてWireless Broadband Alliance(WBA)によりOpenRoamingの運用が開始されており、国内ではCityroamがOpenRoamingのサービスを提供しています。新札幌キャンパスでもPasspointによりCityroamをサービス提供することで、市民の方々も煩雑な手続きなく無線LANをセキュアに利用いただけると考えました。」(原田氏)
2019年夏、同大学はPasspoint対応も含めてRFP(提案依頼書)をベンダーに提示。Passpointは先進技術であるため、その対応について各社からの回答にはバラツキがあったと原田氏は話す。「各社から検証機をお借りし、様々な観点からチェックしました。他社製品と比べて完成度が高かったのが、MSYSが提案したExtremeWirelessでした。また、研究者視点からの細部にわたる質問に対し、MSYSは現状の課題も含め誠実に答えてくれたことで、信頼感と技術力の高さを感じました。さらに、MSYSとExtreme Networks社が一緒に本学に来て説明してくれるなど、一体となったサポートに安心感を抱きました」無線LANの導入ではWi-Fi 6対応もポイントとなった。「当時Wi-Fi 6については、ドラフト版の対応に留まっている他社製品もありましたが、ExtremeWirelessはきちんとWi-Fi CERTIFIED 6™の仕様を満たし認定が通る見込みであったことに加え、人が多く集まる場所には高密度タイプ、研究室などには標準タイプで構成するとの要望に対し、MSYSの提案はとてもバランスがとれていました」(原田氏)
03
先進的なネットワーク仮想化により冗長性の確保と容易な運用を実現
有線LANに関しては、情報システム部門のある江別キャンパスからネットワークの運用管理を行うため、冗長性と運用性がポイントとなった。「一部に障害が発生しても、全体が安定して稼働できることを求めました。他社のネットワーク構成は、中心にスイッチがあり、そこから各フロアに伸びていくスター型で、物理的機器により冗長性を実現していました。
MSYSから提案のあった有線LAN『Extreme Fabric Connect』は、コアスイッチからスター型に加えてリング型を構成し、ネットワークを仮想化することで、二重化以上、障害ポイントの最小化を容易に実現するとともにメンテナンスや拡張も容易です。Extreme Fabric Connectの先進性を高く評価しました」(原田氏)
04[導入のプロセス]
現地施工会社との連携などMSYSのマネジメント力でスムーズに進行
2020年2月に、同大学は提案内容、製品、ネットワーク工事を含むトータルサポート力などを総合的に評価し、MSYSの提案の採用を決定した。コロナ禍で同大学とMSYSの間の打ち合わせではWeb会議を利用。週一回のWeb会議で課題や確認事項について情報共有や意見交換を行うことで、東京と札幌の物理的な距離の壁を全く感じなかったと原田氏は振り返る。「Extreme製品については、MSYSが東京で仕様通りに動くかどうかを確認した後、新札幌キャンパスに搬入してくれました。また、建設会社、地元施工会社など複数の会社が参画するプロジェクトにおいて、段取りの変更への柔軟な対応、早めの調整など、豊富な経験に裏付けられたMSYSのマネジメント力により納期を厳守できました」
05[導入の効果と今後の展望]
設定変更も末端のエッジスイッチの変更のみ
自動的に最適な経路を選択し冗長性を確保
2021年4月、新札幌キャンパスを支えるネットワークが本格稼働。新キャンパスのネットワーク利用状況について原田氏は話す。「現在は、対面授業とオンライン授業が混在している状態です。有線LAN、無線LANともに安定稼働しており、学生に安定した学ぶ機会を提供しています。キャンパス無線LANを利用する場合、教職員や学生はExtremeWirelessを通じて国際標準の教育・研究機関向けの無線LANローミング基盤eduroam(エデュローム)を使っています。今後、市民のキャンパス施設利用制限の解除に伴い、Passpoint対応によるキャンパス無線LANの市民への開放は、地域社会への貢献につながると思っています」
Extreme管理ツールによるネットワークトラフィックの可視化にも期待を寄せていると原田氏は付け加える。「来春、新キャンパスに来校する学生が増えることで、動画の利用などにより回線が逼迫し講義に影響がでないようにネットワークを管理していきたいと思います」
新キャンパスオープン後に生じたネットワークの設定変更にも容易に対応できたという。「江別キャンパスでは他社製品を利用しており、設定変更の際に経路上のスイッチの設定をすべて変更しなければならず多くの手間を要しました。Extreme Fabric Connectは、末端のエッジスイッチの変更のみで自動的に最適な経路と冗長性を確保します。仮に設定の不備があっても、自律的に違う経路を利用しネットワーク全体に影響を及ぼさないため、安心して変更が行えます」
今後の展望について原田氏はこう話す。「今回、先進技術を活用したネットワークを構築できたのは、MSYSのサポートがあればこそと思っています。今は、MSYSと年2回の定例会を開き、情報共有や意見交換を行っています。江別キャンパスのネットワーク更新も近づいており、MSYSには新札幌キャンパスの安定稼働とともに、先進的な提案を期待しています」 社会に生きる力を伸ばし、社会を担う“人財”を育成する札幌学院大学。MSYSは、先進的なネットワークと総合力を駆使し、同大学の取り組みを支えていく。