RPAシナリオとは何か?
RPAシナリオとは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)のシナリオであり、RPAツールを用いて業務を自動化するための一連の手順や動作を定義したものです。具体的には、定型化された人間が行う手作業を模倣し、その一連の動作を自動化することで業務を効率化します。
RPAのシナリオは、これまで手作業で行っていた業務をプログラム化し、特定の業務プロセスを自動化するシナリオを作成することで、システムが自動的に実行するものです。たとえば、データ入力や処理、定型的な事務処理、定期的なレポート作成などが挙げられます。
近年、業務効率化やコスト削減を目的にRPAツールを導入する企業が増えています。そのため、RPAシナリオの作成が重要な役割となっています。効率的なRPAシナリオを作成し最適化することで、業務を自動化し、従業員はより価値の高い業務に集中できるようになります。
RPAシナリオ作成の手順
RPAシナリオの作成手順としては、シナリオの目的の明確化、設計書の作成、設計書の内容の精査、実装、テスト、シナリオの保守・運用などがあります。
シナリオの目的を明確にする
RPAシナリオを作成する際には、まずシナリオの目的を明確にすることが重要です。何を自動化し、どのような業務を効率化するのかを具体的に定義する必要があります。シナリオの目的が明確であればあるほど、その後の設計やテストがスムーズに進みます。たとえば、毎日繰り返し行われるデータ入力作業を自動化したい場合、どのデータをどこで入力するのかといった詳細を定義する必要があります。目的を明確にすることで、関係者とのコミュニケーションも円滑になります。
設計書を作成する
目的が明確になったら、次に設計書を作成します。設計書は、シナリオの詳細な流れや処理の詳細を記述した文書です。具体的な操作手順や注意事項など、どのように処理を進めるかを記述します。また、必要な入力データ、出力結果、エラー発生時の対処方法なども記載します。設計書は、RPAシナリオの開発だけでなく、その後の保守・運用においても非常に重要な役割を果たすため、慎重に作成する必要があります。
設計書の内容を精査する
設計書を作成したら、その内容を精査します。精査とは、設計書の内容が正確かどうかを確認し、必要に応じて修正する作業のことです。特に、業務フローやデータの移動経路が正確に反映されているか、エラー処理が適切に設定されているかなどを重点的にチェックする必要があります。設計書の精査を怠ると、後々の実装段階で問題が発生し、作業が遅延する可能性があります。チームメンバーや関係者と協力しながら設計書を精査することが効果的です。
RPAツールでのシナリオ実装
設計書の内容を精査したら、次はRPAツールを使ってシナリオを実装します。実装とは、設計書に基づいてツール上で特定の自動化シナリオを構築するプロセスを指します。多くのRPAツールはドラッグ&ドロップのインターフェースを提供しており、プログラミングの知識がなくても簡単にシナリオを作成できます。ただし、ツールの機能や特性を理解し、適切に活用することが求められます。また、複雑な処理や業務特有の要件については、他のツールやプログラミングと組み合わせるケースもあります。
シナリオのテスト
シナリオが実装されたら、次のステップはそれをテストすることです。テストの目的は、シナリオが意図したとおりに機能するかどうかを検証することです。テストには、正常系と異常系の両方を含めることが重要です。正常系は通常の業務フローに沿ったテストであり、異常系はエラーが発生した場合の動作を確認するテストです。テスト結果を分析し、不具合や問題を修正するプロセスを繰り返すことで、シナリオの品質が向上します。シナリオの安定性と信頼性を確保するために十分なテストを実施します。
保守・運用
シナリオが本番環境に導入された後は、保守と運用が待っています。保守とは、シナリオの動作を定期的に確認し、必要に応じて修正や改善を行うことです。運用とは、シナリオを日々の業務に活用し、その効果を最大限に発揮させることです。特に、シナリオを安定的に運用するためには、運用の変化や環境の変動に合わせて、シナリオを調整・更新する必要があります。また、シナリオのパフォーマンスや問題点を可視化し、迅速な対応を行うためには、定期的な監視や報告が必要となります。
効率的なRPAシナリオ作成のポイント
RPAのシナリオを効率的に作成するためには、以下のポイントに留意することが重要です。まず、目的に合ったツール、操作しやすいインターフェースを選ぶことです。次に、最初は簡単な作業から始め、徐々に複雑なシナリオを作成できるようにします。ショートカットキーの利用や、必要であれば外部のサポートを利用することも検討しましょう。
サポートやサンプルが充実したツールを選ぶ
RPAツールを選定する際には、ツールが提供するサポートやサンプルの充実度を確認することが重要です。初心者から上級者までをカバーするサポートが提供されているツールであれば、シナリオ作成時のトラブルにも迅速に対応でき、スムーズな導入が可能となります。また、豊富なサンプルが用意されているツールは、シナリオ作成の参考例として非常に有効です。他社の成功事例を参考にすることで、自社の業務に最適なシナリオを作成しやすくなります。RPAの選び方に関しては以下の記事にて詳しく解説しています。

操作が簡単なツールを選ぶ
RPAツールの操作性も重要です。直感的なインターフェースや使いやすい機能を備えたツールを選ぶことで、シナリオ作成がスムーズになります。また、操作性が悪いツールでは、トレーニングのコストや時間がかさみ、結果的に導入の障壁になりかねません。使い勝手の良いツールを選ぶことで、IT部門以外でも簡単に利用でき、全社的にRPAの活用を促進することができます。
簡単な業務から始める
RPAのシナリオを作成する際には、簡単なタスクから始めることを推奨します。慣れないうちから複雑な業務に取り組むと、作成途中で失敗する可能性があります。たとえば、定型的なデータ入力や基本的な情報検索といった単純作業から始めることで、シナリオ作成の基本を理解しやすくなります。段階を踏んで進めることで、徐々に高度なシナリオを扱えるようになります。
ショートカットキーの活用
RPAのシナリオ作成において、ショートカットキーの活用は非常に有効です。効率よく作業を進めるためには、よく使うコマンドや操作にショートカットキーを設定しておくとよいです。マウス操作に比べ、作業時間の短縮やストレスの軽減につながります。また、ツール自体が提供するショートカットキーのリストを参照し、必要に応じて自分でショートカットキーをカスタマイズするのも効果的です。
外注を検討する
RPAシナリオの作成に時間とリソースがかかりすぎる場合は、外注を検討するのも一つの選択肢です。RPAの専門業者に依頼することで、短期間で高品質なシナリオを作成できます。また、外注先の専門知識や経験を活用することで、社内のリソースを他の重要な業務に集中させることができ、全体的な業務効率を向上させることができます。ただし、外注先の選定には注意が必要であり、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
RPAシナリオの実例
以下では、RPAシナリオの代表的な事例を紹介します。
コンプライアンス部門の事例:取引先反社会的勢力排除チェック業務
コンプライアンス部門では、新規取引先の反社会的勢力チェックにRPAを活用するケースが増えています。具体的には、取引開始前に必要な一連の反社会的勢力チェックをRPAで自動化します。通常は、担当者が自社の取引先リストと照合したり、ダウ・ジョーンズなどの公開情報サービスから情報を収集したり、調査台帳を作成したりする必要がありますが、RPAを活用することで、これらの作業を自動化できます。たとえば、新規の顧客情報が登録されると、RPAが自動的に必要な情報を収集・分析し、調査台帳を作成することができます。
これにより担当者の作業時間が大幅に短縮され、1社あたり1時間かかっていた作業が、最終確認まで10分程度で済むようになります。また、データ処理の精度も向上し、人為的ミスによる見落としのリスクも軽減されます。その結果、年間3,000社をチェックする企業では約2,500時間の工数削減が実現し、コンプライアンス業務全体の効率化とリスク管理の質の向上につながります。
建設業界の営業部門の事例:営業部門での新規入札案件自動チェック
建設業界では、入札情報の収集・選定にRPAを活用するケースが増えています。具体的には、営業担当者がWeb上で入札情報を確認し、条件に合う案件を検索する作業を自動化します。通常、営業担当者は発注機関や予定価格、入札受付期間などの条件に合致する案件を手作業で検索する必要があります。たとえば、RPAを利用すれば、あらかじめ設定した条件に基づいて入札情報サイトを自動でスキャンし、条件に合致する案件の情報やURLを営業担当者にメールで通知することができます。
これにより、営業担当者の情報収集時間を大幅に短縮し、提案活動に集中できる環境を整えることができます。また、営業担当者の勤務時間に合わせて情報を配信することで、出社後すぐに最新の案件情報を確認することができ、業務効率が向上します。その結果、営業活動全体の生産性が向上し、より多くの案件を処理できるようになります。
製造業界の生産管理部門の事例:ライン管理・見える化支援業務
製造業では、生産ラインからの日報処理にRPAを活用するケースが増えています。具体的には、各ラインから提出される形式の異なる日報を集約・集計する作業を自動化します。通常、生産管理部門は各ラインの稼働日報を手作業で集計し、工場全体の生産性データとして分析する必要がありますが、RPAを活用することで、これらの作業を効率化できます。たとえば、生産ラインごとに異なるフォーマットから必要なデータを自動抽出し、共通の表に転記する仕組みが実現できます。
これにより、担当者の手作業が大幅に削減され、データ集計の品質が向上します。また、データ処理の精度も向上し、ヒューマンエラーによるミスのリスクも低減します。その結果、工場全体の稼働状況がリアルタイムで可視化され、より効果的な生産効率の分析や改善活動が可能になります。
丸紅I-DIGIOグループが提供するWinActorシナリオ作成サポート
WinActorは純国産RPAツールとして国内シェアNo.1を誇り、NTTアドバンステクノロジ株式会社が開発した10年の実績を持つ信頼性の高いソリューションです。最大の強みは、プログラミング知識不要のGUIによる直感的な操作性。アクションパーツをパズルのように組み立てるだけで、複雑な業務プロセスも自動化できます。
丸紅I-DIGIOグループでは、WinActorのサポートについて、お客様案件に柔軟に対応するプランを用意しています。平日毎日の常駐で要件定義から保守まで対応し、複数業務の自動化を並行して推進する「常駐型サポート」、特定業務に集中した短期集中型支援で、必要期間のみ連続訪問し、効率的にシナリオを作成する「スポット業務自動化サポート」、週1回の訪問でQA会を実施し、お客様作成のシナリオを修正し、技術指導で自社開発力を強化する「教育支援サポート(週1回版)」など、さまざまなニーズに対応したプランを用意しています。
特にシナリオ作成においては、丸紅I-DIGIOグループの強みである、幅広い業種・業態における豊富なシナリオ導入実績に基づく実践的なサポートが可能です。また、通常のWinActorでは困難な処理を可能にする100種類以上のオリジナル機能(ライブラリ)を提供しています。さらに、ツールの操作方法だけでなく、お客様の業務改善まで習得できるトレーニングプログラムも充実しています。
WinActor お役立ち資料
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