働き方改革の一環として、労働生産性を向上させて労働時間の短縮を目指す企業が増えている。また、少子高齢化を背景に人材の確保が難しく、恒常的な人手不足に悩まされている企業も少なくない。
そうした背景もあり、一定の定型業務や反復作業的な業務などをRPA(Robotic Process Automation)に代替させようという取り組みが増えている。
最近では、RPAツールもさまざまなツールベンダーからリリースされており、これから導入を検討する上では、より簡便に導入できて、使い勝手のよいRPAツールを選ぶことが重要となる。
そこで本稿では、丸紅情報システムズ株式会社 技術本部 アプリケーションサービス技術部 RPA技術課 課長補佐 橋爪 研人に、最近のRPA活用における課題とその解決策、そして新機能のリリースによって注目を集めているRPAツール「WinActor」の優位性などについて聞いた。
RPAにおける現状の課題
――昨今のRPAが抱える課題にはどのようなものがあるでしょうか。
橋爪 ひとつには、RPAが非常に多機能化したことによって、ユーザーの立場からすると、どんな機能を使えばいいのかが逆にわかりにくくなっているということがあります。結果的に、そのRPA自体が使い勝手の悪いものになってしまっているという課題が挙げられます。
一方で、機能はたくさんありますが、カスタマイズ性に乏しいというものが多く、技術力の高いユーザーからすると、本当にやりたいことがやれないといったことが課題になってくるケースもあります。
さらに、もうひとつの課題は、クラウド型のアプリケーションなどの活用が企業に浸透したことです。クラウド型のアプリケーションを操作するRPAのシナリオは、場合によってはアプリケーションのバージョンアップのたびに見直さなければならないということで、保守・メンテナンスの負荷が増えてしまうのです。特に最近では、このクラウド型のアプリケーションのバージョンアップや仕様変更(画面の構成の変化など)によって、それまで使っていたシナリオでは使えなくなってしまい、新たにシナリオを作り直すということが増えているようです。
主要なRPAの課題を解決するWinActor
――前項で挙げたようなRPAを活用する上での課題は、WinActorを活用することで解消できるのでしょうか。
橋爪 WinActorも、他のRPAツールと同様に多機能ではありますが、新たに「シナリオ作成ガイド」機能が加わったことで、RPAツールを使い慣れていないユーザーであっても、簡単に利用することができるようになっています。ガイドの指示に従って設定を進めていくだけで、シナリオ作成が可能になったのです。また、シナリオ作成ガイドでは、シナリオ作成によく使用される部品だけを一覧にまとめています。よって、その一覧で必要な部品を選び出すだけでスムーズにシナリオ作成ができてしまいます。
そしてもうひとつ注目したいのが、生成AI(OpenAIやAzure OpenAI)と連携したことです。生成AIを使って、どんな作業内容を自動化したいのかをプロンプトに入力することで、自動的にシナリオのひな形を作成できてしまいます。これまでRPAを使ったことのない、IT関連の知識がそれほど深くないユーザーでも、気軽にシナリオ作成が可能です。
また、技術力の高いユーザーにとって有効な点は、様々なパーツ(ライブラリ)のスクリプトが公開されており、自由にスクリプトを書き換えてカスタマイズができることです。これにより、自社用の独自処理を組み込んだライブラリを開発したり、その独自ライブラリを社内標準機能としてユーザーに展開することで簡単に複雑な機能を組み込むことができるようになります。さらに新機能では、Pythonスクリプトを実行できるようになりました。これにより、カスタマイズ性がさらに高まり、より多様な業務をWinActorに任せられるようになりました。
さらに、丸紅情報システムズでは、独自にAPI連携のためのアダプター開発に注力しており、多様なAPI連携が可能になっていることも、丸紅情報システムズならではの大きな優位性になっています。冒頭の課題のところでも、クラウドサービスの利用が増えていく中で、バージョンアップなどによって、画面の変更などがあると、その対応に手間がかかるということを挙げました。この点に関して、丸紅情報システムズが開発したアダプターを利用していただくことで、API連携により、当該クラウドサービスの画面を介することなく、コードベースで操作ができるようになります。つまり、画面の仕様が変わっても、それによってシナリオの修正といった手間をかけなくても済むということです。
たとえば、ちょっとしたUI(ユーザー・インターフェイス)の変更があったとか、新しい部品が追加されて画面のレイアウトが変わっていた、という場合であっても、裏側にあるコードベースでのやりとりなので、UIの変化の影響を受けにくいのです。そのため、保守・メンテナンスにかかる労力を大幅に削減することが可能になります。
現在のところ、ストレージサービスのBoxとの連携や、OCR製品のDX Suiteに対応した連携アダプターをリリースしています。さらに今後は、DropboxやKintone、Salesforceをはじめとした多種多様なサービスに対応するアダプターをリリースしていく予定ですので、ますます使い勝手がよくなると思います。
このように、WinActor自体の新機能の搭載や、丸紅情報システムズ独自のアダプター開発などによって、とても使いやすいRPAになっているものと自負しています。どのような機能を使うかに迷ったり、シナリオ作成に手間取ったりすることなく、RPAをはじめて使用するようなユーザーでもストレスなく利用することが可能です。また、上級者にとっても、Pythonスクリプトが使えるようになったことで、カスタマイズ性が向上し、より使い勝手がよくなっていますので、幅広いユーザーに利用していただけます。
――ITリテラシーがそれほど高くなくても、ストレスなく使いこなせるということですが、この点で、さらにWinActorが優れている点としてはどんなことが挙げられますか。
橋爪 WinActorが純日本製のツールであり、各種のドキュメントも日本語で対応しているので、日本人ユーザーにはストレスがないという点は、ひとつの優位性といえると思います。
また、UIが非常に使いやすく設計されている点も大きな優位性のひとつです。あまりITリテラシーが高くない、こうしたツールを使ったことのないようなユーザーでも、直感的に、ストレスなく操作できるUI設計になっています。
WinActorをより効率的に使いこなすために必要なサポートサービス
――丸紅情報システムズでは、WinActorを使いこなす上でのサポートサービスも充実していると聞きました。具体的にはどんなサポートサービスがありますか。
橋爪 丸紅情報システムズのユーザーサポートは、大きく3つあります。一つは、eラーニングの提供です。多くの企業がRPAに関心をもち、WinActorの機能性や操作性の良さなどを評価してくださって導入には至るものの、すぐに全員が使いこなせるようにはならないものです。しかしせっかく導入するのですから、一人でも多くの方に使いこなしていただかないと、宝の持ち腐れです。そこで、教育の一環としてeラーニングを提供しています。過去に開催したユーザー向けの勉強会や、各種の関連セミナーなどのアーカイブをご利用いただけるようにしています。
そして、二つ目がスタートアップの導入支援です。企業がはじめてRPAを導入しようという際には、やはり最初期の立ち上がりのところが重要です。最初の立ち上がり、スタートアップでつまずくと、そのあとの使いこなしまでに時間がかかってしまうことが多いようです。そのため、立ち上がりの部分で、丸紅情報システムズが伴走する形で導入を支援するサポートサービスを実施しています。オンラインによる定例会や、運用にかかわるお悩み相談など、多面的に伴走支援いたします。
さらに三つ目のサポートサービスとしては、WinActorに精通した専任技術者による回数無制限のQAサポートを実施しています。私自身もその一員で、顧客ユーザー様からの各種お問い合わせに対応させていただいています。
こうした専門性の高い技術的なQAサポートの場合、回数制限がかかることが多いと思いますが、丸紅情報システムズでは回数無制限で提供しているという点で、優位性があると自負しています。基本的な質問事項はもちろん、中にはシナリオ設計そのものについてのご質問など、かなり踏み込んだご相談事も多々あります。
この3つのサポートサービスを活用していただくことで、WinActorを早期に、社内に浸透させ、業務効率化を早期実現していただければと思っています。
RPA導入のポイントはサポート体制と小さな成功体験
――WinActorの導入を検討する上でのポイントを教えてください。
橋爪 RPAの導入を検討する上では、どんなツールを導入しようかということが重要な選択になりますが、日本製のツールかどうかは、選定の上で重要なポイントになると思います。また、やはり導入後のサポート体制がどれほど充実しているかという点も重要です。その意味では、丸紅情報システムズが提供するWinActorは、ぜひ選択肢のひとつとして検討していただきたいツールです。
また最初から大掛かりに導入することを考えるのではなく、まずスモールスタートでよいので実績をつくるということが大切だと思っています。成功事例を少しずつ積み上げて、だんだん大きな業務に適用していくという使い方がよいと思います。
ある建設事業者様は、入札情報の収集にRPAを活用して、業務の効率化に成功されています。公共事業などの入札情報は、一定期間のみの限定公開情報であるため、公開されている期間内に情報を収集しないといけません。しかしそのために、人的に入札情報にアクセスするのは非常に労力がかかります。そこでRPAを使って自動化することで、業務の効率化に成功しています。
こうした身近な業務をまずはRPAで自動化してみる。そして、その成功体験をもとに、業務の幅をどんどん広げていく、ということがRPA導入を成功につなげるコツかもしれません。
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