リバースエンジニアリングの活用目的とは
リバースエンジニアリングは、主に製造業で用いられます。具体的には「3次元測定機」を使った計測によって、製品の構造や構成要素を分析し、それを新たな自社製品の製造に活かします。曲面が連続するモデルなどは、リバースエンジニアリングが役立ちます。
リバースエンジニアリングの4つのメリット
リバースエンジニアリングのメリットは、以下の4つです。それぞれについて解説します。
- 開発にかかる金銭的・時間的コストを削減できる
- 設計書がなくても製品を製造できる
- 製品の質が向上する
- 職人作業が盛り込まれた完成形状をデータ化できる
1.開発にかかる金銭的・時間的コストを削減できる
通常の製品開発では、試作や改善を繰り返しさまざまな試行錯誤をします。しかしリバースエンジニアリングの場合は、既存製品の設計構造を活用できるため、遠回りする可能性が低いです。そのため、開発にかかる金銭的・時間的コスト削減が期待できます。
2.設計書がなくても製品を製造できる
リバースエンジニアリングでは、設計書が必要ありません。なぜなら、既存製品の分解や解析を行うことで、製品の設計が明らかになるためです。そのため、設計図や仕様書などが残っていない場合でも、製品の製造ができます。代替え品を探す時間や手間も省け、データ化することにより今後の備えにもつながります。
3.製品の質が向上する
既存製品を解析することで、そこに存在する課題が見えてきます。そのため、その課題を解決できるような製品の製造が可能となり、結果的に製品の質の向上が期待できます。合わせて、製品の販売状況や消費者の反応も調べることで、より市場価値の高い製品づくりが可能となります。
4.職人作業が盛り込まれた完成形状をデータ化できる
リバースエンジニアリングでは、測定結果の3Dモデル化もできます。そうすることで、高い技術を持つ職人の技術が伝承されていなくても、その技術を盛り込んだ完成形状のデータ化が可能です。このようなメリットは、製造現場での人手不足・金型や航空機部品などの製造に活きます。
リバースエンジニアリングの活用例
では、リバースエンジニアリングの活用例を3つ紹介します。
1つ目は、フィギュアの作成です。フィギュアの作成には本来複雑な工程を要しますが、リバースエンジニアリングによって構造解析することで、比較的容易に製造ができるようになります。
2つ目は、金型の作成です。金型の作成には大きな時間的・金銭的コストを要しますが、リバースエンジニアリングを活用すれば、短期間かつ低コストでコピー金型を作成できます。また金型が故障した際には、修繕部品の作成をすることも可能です。
3つ目は、美術品のデータ保存です。もし美術品を実物保存する場合は、劣化や盗難などのリスクがあります。しかし、リバースエンジニアリングでデータ化して保管することによって、これらのリスクがなくなります。
リバースエンジニアリング適用に向けた課題
リバースエンジニアリング適用に向けた課題として考えられるのが、対象製品の成分分析です。もし材料が判明している場合は問題ありませんが、判明していない場合は特定する必要があります。しかし、それには専用の分析機器の導入が必要です。
また、対象製品の寸法を測ったり、測定結果を図面やCADデータに変換するのに手間がかかることも課題です。そのため、対象製品を分解せずに寸法測定や3DCADデータ化ができるように、3Dスキャナや測定データのCAD化ソフトの技術が進化しつつあります。
リバースエンジニアリングの違法性
リバースエンジニアリングは違法かどうかですが、結論からいうと合法です。元々リバースエンジニアリングは著作権法に抵触するかどうかがグレーゾーンとされていましたが、2019年の法改正により、リバースエンジニアリングが合法であるとの旨が明記されました。
ハードウェアを製造する場合であっても、リバースエンジニアリングを合法的に活用できます。ただし、各法律との関係は把握しておく必要があります。なぜなら、場合によっては違法となってしまう可能性があるためです。法律を侵害してしまった場合、企業の社会的信頼が大きく低下する恐れがあるため、以下で解説する各法律との関係を確認しておきましょう。
知的財産権との関係
リバースエンジニアリングによって、既存製品に活用されている技術を解析し、改良して製品を製造した場合、知的財産権の侵害に該当する可能性があります。
特許権との関係
もし「発明」に該当する技術を用いてリバースエンジニアリングを行った場合、特許権に抵触する可能性があります。ただし、試験や研究を目的としてリバースエンジニアリングを行う場合は、特許権には抵触しません。
意匠権との関係
意匠権は、工業上利用が可能なデザインに対して付与されるため、模倣品の製造・販売は法に抵触します。そのため、模倣とみなされない範囲でリバースエンジニアリングを活用する必要があります。
著作権法との関係
ハードウェアの場合、リバースエンジニアリングを他社研究の目的として行うなど、悪意の ない用途に用いられる場合は法に抵触しません。
不正競争防止法との関係
既存製品を正規ルートで購入した場合、所有権は購入者に移転するため、リバースエンジニアリングに活用しても問題ありません。ただし不正に既存製品を入手した場合は、営業秘密の持ち出しに該当するため、リバースエンジニアリングによって製品を解析して情報を得ることは不正競争防止法に抵触します。
リバースエンジニアリングの方法
リバースエンジニアリングの方法は、以下の3つです。それぞれについて解説します。
- CTスキャン
- CMMマシン
- 3Dスキャナー
- CAD化用リバースソフト
1.CTスキャン
CTスキャンとは、「高精度X線」を使って対象物の内部状態を撮影することです。CTスキャンのメリットは、製品を分解する必要がないことと、従来の測定器では測定が難しかったような内部構造の把握ができることです。CTスキャンは、医療機器や標本のデジタル化などに活用されます。
2.CMMマシン
CMMマシンとは、「三次元測定器」のことです。三次元測定では、X・Y・Zの3つの座標軸を用い、対象物の形状や寸法を測定します。CMMマシンのメリットは、対象物のサイズや材質を問わないことです。
3.3Dスキャナ
3Dスキャナとは、対象物をスキャンして3Dデータとして取り込む機械のことです。3Dスキャナのメリットは、設計書がなくても製品の「CADデータ」を起こせることです。
4.CAD化用リバースソフト
CAD化用リバースソフトとは、測定データで取得した点群データをCADサーフェイスへ変換するソフトのことです。また設計CADと測定対象物を比較し、差異分のみリバースするハイブリッドモデリングなどもあげられます。
まとめ
リバースエンジニアリングは原則違法ではありませんが、知的財産権や特許権などとの関係には注意を払う必要があります。リバースエンジニアリングを法に抵触しないように活用すれば、コスト削減や製品の質向上などのメリットを享受できます。ぜひ製品の製造方法の一つとして検討してみましょう。
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