日本では少子高齢化が進み、今後ますます、あらゆる産業で人手不足が深刻化していくことが予想されている。そうした中で、働く意思のある高齢者の積極的な雇用促進や、さらなる女性の社会進出に期待が寄せられており、特に女性の社会進出については国が後押しする形で推進されている。
しかしその一方で、要介護者人口は増加の傾向にあり、女性の社会進出が進展していることとも相まって、いわゆる家庭内介護の担い手も不足する傾向にある。そのため介護施設などは、慢性的な人手不足の中で、増加する利用者に対応せざるを得ない厳しい環境下におかれている。
介護スタッフの業務負荷は増し、場合によっては提供される介護サービス自体の質の低下といった問題も顕在化しつつある。
そうした状況の中、できるだけ人を増やさずに、介護スタッフの業務負荷を軽減して生産性を向上させ、提供されるサービスの質の低下も防ぐ施策として、介護施設におけるIoT導入に注目が集まっている。
本稿では、介護施設などにおける効果的なIoT導入のポイントや、それによって実現し得る業務効率化と提供サービスの質的向上について、IoT活用のプラットフォーム「MAIDOA plus(マイドアプラス)」を展開する丸紅情報システムズ株式会社 クラウドソリューション事業本部 AI・IoTソリューション部 副部長 油井 準人に話を聞いた。
介護業界が抱える課題
日本は世界的に見ても、少子高齢化が進んでいる国のひとつである。少子化によって、日本全体での労働力人口は減少する傾向にあり、介護業界に限らず、あらゆる産業分野で人手不足が深刻化しつつあるのが実情だ。そしてまた、「高齢化によって将来的な要介護者の数は増加する傾向にあり、そこに加えて、国を挙げての女性の社会進出の推進によって、今後ますます介護施設の利用ニーズが高まるだろう」と、油井は予測する。
「今、日本では労働力人口の減少傾向を憂慮して、より積極的な高齢者の雇用促進や、女性の社会進出を国が後押しする形で推進しています。それ自体はとても良いことですが、その一方で、これまでの、いわゆる家庭内介護の担い手だった人たちが社会進出によって介護を担えなくなり、施設利用が増えるだろうと考えられます。今後、介護業界はますます需要過多になっていくだろうと推測されます。」と油井は懸念する。
需要が増えても、それに伴ってスタッフを増やすということが難しい状況の中で、介護業界ではIoTやAIを有効に活用して、DXによる生産性向上を目指し、需要増に対応していくことが求められているといえよう。
介護スタッフの業務負荷を軽減し、サービス品質の向上に資するIoT活用
介護サービスを提供すべき要介護者が増えているにもかかわらず、介護スタッフの増員が難しいとなれば、介護スタッフ一人あたりの業務負荷は増える一方だ。ややもすれば、業務負荷が増えたことで、提供するサービス自体の質の低下につながる危惧も生じる。
「介護スタッフの業務負荷を軽減して生産性を向上させ、それによって生まれる余裕をサービス提供に振り向けることで、サービス品質の向上にもつなげることができる施策が、IoT導入による業務効率化です。」と油井はいう。
「たとえば、介護施設内に個室があれば、介護スタッフが定期的に巡回して様子を見たり、検温や血圧測定などを実施して記録し、事務スペースでパソコンにデータを入力したりする、といった業務が発生します。こうした業務は、個室にさまざまなセンサーを設置し、そのセンサーが検知した情報を集中管理できるようになれば、大幅に軽減できます。事務室内で集中管理し、センサーによるアラートが発出した場合にその個室にかけつければよいのです。また、検温や血圧測定なども計測結果を無線通信機能を使ってデータ送信してしまえば、介護スタッフが記録をとり、それをパソコンで入力するといった作業は不要になります。測った瞬間に、なんらの作業をせずともデータがシステムに取り込めます。何よりも、このやり方なら、体温計や血圧計の示す数値を見誤ったり、あるいは書き間違いをしたりといった人的ミスも防げます。」と油井は話す。
こうしたセンサーによるモニタリングは、介護施設内だけでなく、訪問介護を扱う介護事業者も活用できる。対象となる要介護者の自宅に必要なセンサーを設置すれば、わざわざ訪問しなくても、多様な情報を一元的・集中的に収集・管理することができる。
「たとえば、一人暮らしの高齢者のお住まいに温度・湿度センサーを設置すれば、熱中症の危険性を早期に見極めることができますし、人感センサーや転倒センサーなどでは、居室内での動きや転倒したかどうかなどを遠隔で確認できます。さらに照度センサーを使って照明のオン・オフをモニターし、生活の様子を確認することもできます。物理的な巡回では訪問した時点の様子しか見られませんが、センサーなら24時間・365日のモニタリングも可能です。」と油井がいうように、IoTのセンサーを活用すれば、かなり業務負荷を軽減できそうだ。また、人が見て回るよりも、さまざまなセンサーを活用したほうが、効率的であることはもちろんだが、よりきめ細かい確認が可能になるという点も大きなメリットだといえよう。
システムの柔軟性とコストパフォーマンスの高さで介護業界を支える「MAIDOA plus」
介護施設や介護事業者などが活用できるセンサーは多種多様だ。居室空間であれば、前述のように温度・湿度センサーや照度センサー、人感センサー、転倒センサーなどがあり、また介護シーンではあまり使われないかもしれないが、CO2センサーなどもある。
このような多種多様なセンサーの中から、どのようなセンサーを活用して、どのようなモニタリングを実施するかを検討し、具体的な内容が固まったら、対応するシステムを構築することになる。ただし、こうしたIoT活用のシステムは、大きく2つの方向に分化していると油井はいう。
「ひとつは、とてもリーズナブルなシステムで、コスト負担が少なくて済む半面、機能が限定的だったり、使えるセンサーが決まっていたりと、少々自由度の低いものです。そしてもうひとつは、独自にシステムを開発して、必要な機能を網羅し、使いたいセンサーをきちんと使えるようにするというものです。ただし、これには場合によっては数千万円単位の開発費用が必要です。そうした中で、当社のMAIDOA plusは、機能や使えるセンサーなどが幅広く、かつ必要に応じて介護事業者様ごとにカスタマイズできるというシステム的な柔軟性も高いのに、開発費用もかからず、コストパフォーマンスの高いソリューションになっています。」と油井は、MAIDOA plusの優位性に自信を覗かせる。 MAIDOA plusは、IoT活用のプラットフォームとして開発されたソリューションで、商業施設での環境モニタリングやトイレの満空情報の管理に利用されたり、オフィスなどでの会議室の利用状況確認や室温管理などに用いられたりと、IoTの活用ニーズに応じて導入のステージを広げている。
優れた機能性と拡張性の高さで、介護施設ごとの個別性にも対応可能
MAIDOA plusは、利用するセンサーを限定しないため、必要に応じてさまざまなセンサーを使用できるという点が大きな強みのひとつとなっている。たとえば、センサー自体は日々進化しており、今年より来年、来年より再来年に市場に出る製品のほうが性能は上がっていく。MAIDOA plusはセンサーを限定しないので、センサー自体の性能がアップすれば、それを活用することで、モニタリングの質を高めていくことが可能となる。
「独自のシステムを開発した場合には、新しいセンサーを導入しようとすれば、システム改修というものが必要となり、多くのシステム改修費用が必要になることもあります。しかしMAIDOA plusなら、センサーとのAPI連携を設定するなどの簡単な対応で済ませられるので、センサーを替えたり、あるいは運用途中で新しいセンサーを導入したりするなどして、モニタリングするデータの内容を拡張していくこともスムーズに実施できます。」と油井は話す。
ひと口に介護施設といっても、どのような介護サービスを提供しているのかによって、業務効率改善につながるIoT活用の方法なども千差万別である。そのため、個々の介護事業者がもつニーズに適切に対応できるシステム的な対応力や拡張性は重要であり、その点MAIDOA plusは頼りがいがありそうだ。
さらにいえば、MAIDOA plusのダッシュボードは必要な情報を一覧でき、またモニタリングしているデータごとにしきい値を設定しておけば、しきい値を超えるなどした場合のみアラートを発報し、当該のアラートに関する各種のデータを閲覧するといった操作も簡単で、モニタリング業務自体のスタッフへの負荷を軽減できるようになっている。基本的にダッシュボードの設定は丸紅情報システムズ側で行うが、一定レベルのリテラシーがあれば、ユーザー側でデザインすることも可能だ。
「私たちが提供するMAIDOA plusなら、個々のお客様のニーズに、かなり柔軟な対応が可能だと自負しています。もしIoTの導入で業務改善を実施したいとお考えでしたら、まずは私たちにご相談いただきたいです。」と油井は話す。
MAIDOA plus お役立ち資料
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