コロナ禍を機に、在宅ワークやオフィスのフリーアドレス化が促進された。働き方改革の推進やワークスタイルの多様化という背景もあり、ウィズコロナ、ポストコロナといわれる今日においても在宅ワークの拡大傾向やオフィスのフリーアドレス化はさらに勢いを増している。
オフィスの移転や統合を契機としてネットワーク環境の刷新を図るケースも増えており、いかに使い勝手がよく、かつセキュリティ性の高いネットワークを構築できるかは、企業にとって重要なキー・ファクターになっている。
丸紅I-DIGIOホールディングスを核として丸紅グループ内のIT事業会社4社が結集した丸紅I-DIGIOグループでも、オフィス移転を契機に全5社のネットワーク統合を推し進めた。
オフィス移転に伴う丸紅I-DIGIOグループのネットワーク統合プロジェクトの概要や成果について、丸紅ネットワークソリューションズ株式会社 システムソリューション本部 ネットワークSE第二部の関口 卓と、丸紅ITソリューションズ株式会社 IT基盤事業本部クラウドビジネス部の小林 聡美に話を聞いた。
1.オフィス移転に伴うネットワーク統合のねらいと課題
丸紅グループの中でICT領域を担う丸紅情報システムズ株式会社、丸紅ITソリューションズ株式会社、丸紅ネットワークソリューションズ株式会社、株式会社イーツの4社は、これまで連携しながら企業等にICTソリューションを提供してきたが、2023年4月に新たに誕生した中間持株会社である丸紅I-DIGIOホールディングス株式会社(以下「丸紅I-DIGIO」)のもとで連携をより一層強化し、さらなるビジネス拡大を図ることとなった。
そこで、全社が同じオフィスに集結するオフィス移転を契機に各社の社員の日常的なコラボレーション体制を強化すべく、全5社のフリーアドレス環境を構築するためのネットワーク統合プロジェクトが立ち上げられた。
小林 2023年4月にホールディングス体制に移行したねらいは、各社の協業体制を強化することで事業にシナジーを生み出し、各社の事業成長を加速していこうというところにあります。それを強力に推進していくためには、ネットワークを含む各社の業務環境がバラバラでは非効率です。そこで、各社の社員同士が、いつでも、どこにいても打ち合わせができたり、お互いが隣に座って一緒に業務をできたりするような環境であるべきだと考えたのです。複数社が連携してプロジェクト単位で業務遂行に取り組むようなシーンが増えることも前提にすると、オフィスの完全フリーアドレス化、そしてネットワークの統合は不可欠でした。
2.短期プロジェクトゆえのハードルとその対応
ネットワーク統合のプロジェクトは、丸紅ITソリューションズと丸紅ネットワークソリューションズの2社が中心となって進められた。
関口 ネットワーク統合にあたっては、まずは各社の要望などをヒアリングしつつ、どこまで要望を受け入れられるかなどについての調整作業を行いました。それぞれが独立した企業でオフィス環境も違っており、使用しているルーターなどの機器、運用ルールも各社各様です。この各社の要件を整理し、全体としての方針を検討しつつ全体の要件定義に落とし込むまでが大変な作業でした。
小林 すでに移転先と移転時期が決まっている状況だったため、納期をはじめさまざまな制約条件がある中で、遅延の許されないハードなプロジェクトになりました。使用機器やルールの調整も大変でしたが、各社のネットワーク環境を把握するところから始めなければならず、そうした情報提供を含めて関係者全員が同じ目標に向かって協力していく意識合わせが大切で、その点は重視しました。
この規模のプロジェクトとしては極めて厳しい短いスケジュールは、大きな課題となった。
小林 3月に要件整理、4月に方針検討、以降に要件定義や設計等の工程を経て、12月に移転という1年に満たない短いスケジュールでした。この規模であれば、普通なら1年半くらいはかかるプロジェクトです。いくつかのタスクを同時並行で進めるなど、メンバー全員が協力しあって、なんとか成功にたどり着くことができました。
10月の半ばには社内テストを実施し、翌月のLAN配線作業の完了を待って現地テストを実施したが、このテストも相当な短期間であった。
関口 社内テストには2ヵ月以上は欲しかったのですが結果的に1ヵ月程度しか時間がとれず、プレッシャーを感じながらも、なんとかクリアすることができました。その後の現地テストでは各社のシステム担当者が現地に入って接続テストなどを繰り返し行い、なんとかオンスケジュールでプロジェクトを遂行することができました。
3.ネットワーク統合のキー・ファクター
今回のネットワーク統合プロジェクトでは、成功のキー・ファクターともいえる、2つの機器の導入があった。
関口 ひとつは、L3スイッチです。バーチャルでルーティングを分けることができるVRF(Virtual Routing and Forwarding)機能を使い、各社とも途中までは同じ経路ですが、各社のルーターに分かれていくところまでセキュリティを担保しました。今回、Merakiダッシュボード対応のL3/L2スイッチを採用しました。これだとアクセスポイントを管理するMerakiダッシュボードの同じ画面で一元的に管理できるので、非常に管理がしやすくなるメリットを享受できました。
もうひとつは、認証サーバーに採用したエイチ・シー・ネットワークス社の『Account@Adapter+(アカウント アダプター プラス)』です。管理画面のUIが非常に見やすくて使いやすく、管理業務を効率化できるメリットがありました。丸紅ネットワークソリューションズでは、24時間365日体制の運用監視サービスを提供しており、ネットワーク統合後は運用をそこに引き継ぐことになっていました。実際の運用・保守を効率的に実施するという点でも管理のしやすさは機器選定の大きなポイントで、重要なキー・ファクターでした。
4.丸紅I-DIGIOグループの総合力によるネットワークソリューションについて
今回のネットワーク統合プロジェクト自体は、全体的には丸紅I-DIGIOグループ各社が日常的にクライアント企業に提供しているソリューションと大きな違いはない。しかし、グループ各社が指定する複雑な要件を取りまとめ、極めて短期間で遂行したという点では、より深い知見やノウハウを獲得する好機であり、新しい機器の導入などチャレンジングな側面も多々あった。そして、そうした経験値はいま付加価値の高いネットワークソリューションの提供に生かされている。
小林 このプロジェクトを通じて、丸紅I-DIGIOグループ各社にはいろいろな知見の蓄積がありました。このプロジェクトをひとつの事例としてお客様にご紹介する中で、オフィス移転に伴うさまざまなソリューション案件の引き合いをいただいています。同じICT領域でも丸紅I-DIGIOグループの4社はそれぞれに専門性が異なっているのですが、今回のオフィス移転、ネットワーク統合の成果として各社の連携や情報共有が促進され、どの会社にどのようなご相談をいただいても丸紅I-DIGIOグループ全体で付加価値の高いソリューション提供ができる体制が整っています。どのようなことでも、ICT領域のお困りごとがあれば、ぜひご相談いただきたいと思います。
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