ハンディタイプの3Dスキャナとは? ハンディスキャナの選び方を用途別に紹介

従来、ハンディタイプの3Dスキャナは、使いやすい反面、精度が低いとされていました。しかし現在では、ハイエンドレベルの精度を実現しながら、携帯性も併せ持つハンディタイプの3Dスキャナの登場により活用シーンが広がっています。

本稿では、ハンディタイプの3Dスキャナの特性や優位性、メリット・デメリットなどについて解説します。また、スキャナ導入時の留意点や近年の活用事例についても紹介します。

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三次元測定機(3Dスキャナ)の種類

三次元測定機(3Dスキャナ)とは、対象物の三次元座標を計測し、寸法や輪郭・幾何公差などの三次元形状を測定する機械です。さまざまな種類があり、測定用途により使用する種類が異なります。

据付型 三次元測定機

従来、三次元測定機というと据付型(門型で接触型)が主流でした。据付型三次元測定機は高精度で安定した測定が可能です。近年はレーザープローブも使用できるようになり、非接触型三次元測定機としても利用可能になりました。これにより、プローブでは届かない複雑な形状の測定も可能になりました。

設置環境によっては温度管理が必要で、対象物が大きくなればなるほどスペースが必要になります。また、装置自体が大型になるため、初期導入費用は1000万円以上になることが多いです。なかには1億円を超える高価な製品もあります。

デスクトップタイプ 3Dスキャナ

デスクトップタイプの3Dスキャナは、文字通り、机上などに据え置き型で使える3Dスキャナです。デスクトップタイプの3Dスキャナの多くは、1000万円を下回る程度の価格帯の製品が標準的です。

一般的には形状測定が主機能で、寸法測定もできるというものが多く、3Dプリンターの普及に対応する流れで、ニーズが高まってきた3Dスキャナといえます。

ハンディタイプ 3Dスキャナ

ハンディタイプの3Dスキャナは、3Dスキャナ全体の中では比較的新しいジャンルです。

従来の3Dスキャナは、温度管理された測定室に測定物を持ち込む必要がありましたが、ハンディタイプは測定場所に3Dスキャナ本体を持ち込めるため、活用用途が広がります。

もともと3Dスキャナは手軽さを目的に導入され、その手軽さゆえに測定精度が低いとされる傾向がありました。しかし、現在のハンディタイプの3Dスキャナの精度は向上しており、ハイエンドの工業用3Dスキャナに匹敵する精度を保証した製品も登場しています。

ハンディタイプ 3Dスキャナのメリットとデメリット

ハンディタイプの3Dスキャナにはメリットとデメリットがあり、これらを踏まえたうえで導入を検討する必要があります。

ハンディタイプ 3Dスキャナのメリット

ハンディタイプの3Dスキャナの最大のメリットは可搬性です。工業用スキャナやデスクトップ型スキャナに比べ、ハンディタイプの3Dスキャナは小型・軽量なものが多く、どこにでも持ち運んで活用できることから近年注目を集めています。

小型・軽量であることによって、スキャナ自体の取り回しの自由度が高く、対象物に対してその場で測定が可能になる点もハンディタイプの大きなメリットのひとつです。

ハンディタイプ 3Dスキャナのデメリット

ハンディタイプの3Dスキャナのデメリットとして、測定スキルの習熟度によって測定精度に差が出てしまう傾向があることが挙げられます。

一般的にハンディタイプの3Dスキャナは、対象物にレーザー光を照射して、そのレーザー光の反射を検出器で捉えることで形状を測定します。精度の高い測定結果を得るためには、反射特性上照射するレーダーが検出器で捉えられるように対象物に対して「垂直方向」であることが重要です。

自動車のボディや、スマートフォンなどに代表される近年の工業製品は、平面よりも自由曲面が多いため、対象物の形状に合わせてレーザービームを照射することが非常に難しくなっています。レーザー光の反射特性を理解せずに、対象物の形状をなぞってスキャンするだけでは、製品本来の精度が得られない場合があります。

ハンディタイプ 3Dスキャナ選びのポイントと注意点

ハンディタイプの3Dスキャナを導入する際には、以下の3点に注意して製品選びをする必要があります。

精度と信頼性

同じ対象物を繰り返し測定する場合、測定結果は常に同じ値を示すはずです。しかし、実際には環境やノイズの影響で測定値にばらつきが生じます。このばらつきのことを測定精度といいます。導入を検討している製品の測定精度がどの程度なのか、誰もが必ずチェックするポイントです。測定精度は、0.1mmのものから0.02mmもの、あるいはそれ以上に精度の高いものなど千差万別です。そのため、用途や測定物の種類によって、必要な精度の製品を選ぶ必要があります。

ここで重要なのは、公表されている精度が何を基準としているのか確認することです。測定機の精度基準が統一されていないと信頼性は確保できません。ドイツではVDI、日本ではJISなど、さまざまな国の規格があります。たとえば、ドイツの規格であるVDIに基づいた精度であれば、その規格に規定されている使用方法であれば、当該の精度が得られることがわかります。これらの規格は製品カタログなどに明記されていることが多いですが、もしも記載がなければ、営業担当者に確認する必要があります。

スキャンサイズと適切な範囲

スキャンサイズとは、1回のスキャンで測定できる範囲のことです。必要なスキャンサイズは用途によって変わるため、測定物に応じて適切なスキャンサイズの3Dスキャナを選択する必要があります。

スキャンサイズと併せてチェックしておきたいのが、適切な範囲です。ハンディタイプの3Dスキャナは、対象物をなぞるようにしてスキャンしていきますが、1回でスキャンできるサイズを超えてスキャンすると、貼り合わせ誤差が発生してしまいます。

基本的に、スキャンする面積が大きいほど誤差は大きくなります。ただし、一定の大きさまでであれば、最大精度を担保できる適切な範囲というものがあります。たとえば、スキャンサイズの2倍、あるいは3倍までは精度を保証できる製品などもあります。どの程度の大きさまで精度の高い状態でスキャンが可能なのかについては、事前に把握しておく必要があります。

使いやすさと安定性の評価方法

一般的にハンディタイプの3Dスキャナは、スキャナ本体とパソコンを有線で接続し、スキャナ自体の操作をパソコンで行うというものが標準的です。しかしこれでは、スキャナを操作するためにいちいちパソコンがある場所まで戻らなければならず、ハンディタイプの3Dスキャナの特性でもある可搬性・機動性を十分に活かすことが難しくなってしまいます。スキャナ自体に操作ボタンがついている製品もあるため、可搬性・機動性を活かしたい場合は、そのような製品を選択しましょう。

さらには、スキャナ自体のメーカーと、それを制御するソフトウェアのメーカーが異なる場合、使いにくくなる可能性があります。たとえば、スキャナで読み取ったデータをいったん出力し、その上でパソコンに取り込むといった手間が必要になるケースもあり、あまり使い勝手はいいとはいえません。できれば、ハードウェアとソフトウェアは同一メーカーの製品が望ましいといえます。

安定的に活用できるかどうかも、重要なチェックポイントです。3Dスキャナの精度を保証するためには、キャリブレーション(較正)作業が必要になります。従来の3Dスキャナでは精度のズレが生じるようになった場合は、メーカーへ修理に出し、ズレを直す必要がありました。最近では、スキャナ自体に自動キャリブレーション機能を搭載しているものも登場しています。

また、使用環境が変わった際には、その都度キャリブレーションし直す必要があり、その作業の手間や要する時間が作業効率の悪化につながることもあります。そのため、キャリブレーションをスムーズに実施できる機能があるかどうかも、スキャナを安定的に利用する上では重要なポイントとなります。

ハンディタイプ 3Dスキャナ用途別活用事例

ハンディタイプの3Dスキャナの活用事例について分野別に紹介します。

保全分野での活用

製造現場でのあらゆる保全活動に関連して、ハンディタイプの3Dスキャナの利用シーンが増えています。たとえば、金型を用いる製造現場では、金型のメンテナンスは不可欠です。こうした金型のメンテナンスなどにおいて、マスターデータや使用前の金型のスキャンデータと、金型の現物のスキャンデータを比較し、摩耗や劣化などがある場合は修理・保全が必要です。近年はこのような保全活動を製造現場で実施することが多くなっており、金型のスキャンなどを現場で機動的に実施できる、ハンディタイプの3Dスキャナの重要性が増しています。

自動車・航空分野などでの活用

自動車メーカーなどでは、金型保全時にハンディタイプの3Dスキャナを活用したり、品質保証のための計測器としてハンディ3Dスキャナを活用したりする事例が増えています。

従来、計測を行う際には、計測室に対象物を持ち込むというのが一般的でしたが、ハンディタイプの3Dスキャナがあれば、その場で測定できるので作業効率が向上します。

また航空機メーカーなどでは、航空機のMRO(メンテナンス・リペア・オーバーホール)を、コストの安い東南アジアで実施していましたが、コロナ禍の影響でトラブルが頻発したために、国内でMROを実施する気運が高まりました。航空機のMROを国内で実施する上で、機材の取り回しが良く、機動的に活用できるハンディタイプの3Dスキャナの導入が進んでいます。

建築分野での活用

建設業界では、ビルや工場、プラントなどの構造物や各種設備の劣化や傾きを計測し、必要なメンテナンスを迅速に行う動きが活発化しています。以前はビルなどの構造物の計測はあまり行われていませんでしたが、東日本大震災をきっかけに関心が高まりました。

ハンディタイプの3Dスキャナは、手軽に外に持ち出せる利便性から、ゼネコンを中心に活用が進んでいます。

医療分野での活用

病院で使用する鉗子やハサミ、開胸器などの医療器具を扱うメーカーは、昨今の競争環境のグローバル化によって、海外メーカーとの競争が激しくなりつつあります。その結果、医療機器の品質保証と品質管理はかつてないほど重要になり、より精密な測定と検査が求められるようになりました。取り扱っている製品自体が比較的小型であるため、大きなタイプのスキャナは必要なく、ハンディタイプの3Dスキャナのニーズが高まっています。

ハイエンドな3Dスキャナに負けない精度を実現した「ZEISS T-SCAN hawk 2」

丸紅情報システムズが取り扱う、ハンドヘルド3Dレーザースキャナ「ZEISS T-SCAN hawk 2」は、非接触3D測定機器メーカーであるドイツCarl Zeiss GOM Metrology 社製で以下のような特徴があります。

20本のブルークロスレーザーを採用し、垂直を意識しない測定が実現

センサー重量は約900gの軽量タイプで、長時間使用しても腕にかかる負担は大きくありません。また、20本のブルークロスレーザーを採用しているため、特別な測定スキルがなくても精度の高い測定が可能です。

スキャンサイズの3倍の適切な範囲を確保

「ZEISS T-SCAN hawk 2」は、最大600×550ミリのスキャンサイズをもち、ISO 10360に基づく精度検証で、0.02ミリ(+0.015ミリ/メートル)の高精度を実現しています。かつ、「適切な範囲」はその3倍まであり、精度を落とすことなくスキャンが可能です。

さらに大型測定のためのサテライトモードを標準搭載しています。この機能を活用することで、最大で4メートルまでのスキャンに際して、最高精度を保証することができます。

完全なリモートワークフロー

「ZEISS T-SCAN hawk 2」は、本体の手元部分に4つの操作ボタンがあり、このボタン操作によってコントロールができるため、パソコンのある場所まで移動して作業をするといった手間は不要です。

ハードウェアもソフトウェアも同一メーカー製

「ZEISS T-SCAN hawk 2」と、それを利用するためのソフトウェア「ZEISS Quality Suite/GOM Inspect」も、Carl Zeiss GOM Metrology 社製のため、一貫したスムーズな利用が可能です。

ワンショット・キャリブレーション

「ZEISS T-SCAN hawk 2」には、2つのキャリブレーション機能があります。1つ目は、キャリブレーションパネルという基準器を使ったキャリブレーションです。ユーザー自身で行い精度維持管理ができます。そして2つ目はワンショット・キャリブレーション機能です。「ZEISS T-SCAN hawk 2」を使ってワンショット撮るだけで、較正状態を簡単に確認できます。

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