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エネルギーハーベスティング(環境発電)とは?活用例と課題を解説

再生可能エネルギーを利用し、微小なエネルギーを効率的に電力に変換するエネルギーハーベスティングは、環境負荷の低減やIoT機器のバッテリーレス利用を可能にするなど、企業に多くのメリットをもたらします。

本稿では、エネルギーハーベスティングとは何か、なぜ今注目されているのかについて述べるとともに、近年のエネルギーハーベスティングの具体的な活用事例や普及・浸透に向けた課題を解説します。

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エネルギーハーベスティング(環境発電)とは?

エネルギーハーベスティングとは、さまざまな環境から微量のエネルギーを採取し、電気に変換して利用する技術です。環境発電とも呼ばれます。

エネルギーハーベスティングは、光エネルギーや熱エネルギーなどの再生可能エネルギーを発電のエネルギー源として利用します。

近年、化石燃料の使用によるCO2排出による地球温暖化などの環境問題が深刻化しています。世界的にカーボンニュートラルへの機運が高まる中、化石燃料に依存したエネルギーのあり方が見直されています。同時に、エネルギー資源の枯渇も問題になっています。そこで、環境問題と資源枯渇問題の両方を解決できる可能性がある再生可能エネルギーが注目されています。

太陽光発電や風力発電など、さまざまな再生可能エネルギーが実用化されていますが、こうした再生可能エネルギーを少量でも有効活用しようという「エネルギーハーベスティング」の概念が、SDGsへの世界的な関心の高まりとともに近年注目されています。

エネルギーハーベスティング自体は比較的古くから存在しており、小型ソーラーパネルを搭載し、電池を使わない電卓や腕時計などは、エネルギーハーベスティング技術を利用した製品の一例です。

エネルギーハーベスティングが注目されるようになった背景には、環境問題が大きく影響していること以外に、地政学的な影響もありますが、原油価格の高騰によるエネルギーコストの上昇も影響しています。また、さまざまな電子機器の省電力化が進み、身の回りの小さなエネルギー源でも利用できるようになったことも要因の一つとしてあげられます。

エネルギーハーベスティングのエネルギー源

エネルギーハーベスティングに使われるエネルギー源には、太陽光だけでなく、照明などの光、機械が発する振動、スイッチを押したときに発生する微振動などがあります。以下に、エネルギーハーベスティングに使われる主なエネルギー源を紹介します。

光エネルギー(光発電)

光エネルギーとは、一般的に太陽光発電を指します。実用化が進んでいますが、発電に利用できる光エネルギーは太陽光だけではありません。エネルギーハーベスティングでは、蛍光灯などの照明もエネルギー源として利用できます。

熱エネルギー(熱電発電)

熱エネルギーとは、一般的に火力発電や原子力発電を指します。再生可能エネルギーとしての熱エネルギーでは地熱発電がよく知られています。エネルギーハーベスティングのエネルギー源として見た場合、屋内と屋外の温度差、人間や動物の体内の熱、産業機械が発する熱などが挙げられます。

電磁波エネルギー(電磁波発電)

電磁波エネルギーとは、テレビやラジオ、さらには携帯電話や無線LANなどから電波エネルギーを採取し、電力に変換することです。技術的には可能だといわれていますが、電波法などの法的規制があるため、日本での実用化にはまだ時間がかかるとされています。

振動エネルギー(振動発電)

振動エネルギーとは、人や物が動くときに発生する振動、ドアノブの回転運動、水洗トイレの流水の運動エネルギー、スイッチが押された瞬間に発生する運動エネルギーを電力に変換することです。

たとえば、ソーラーパネルを搭載した電卓は太陽光を浴び続けることで動作しますが、電卓のキー操作で発生する振動エネルギーを利用できれば、ソーラーパネルすら使わずに電卓を長く使うことができます。

エネルギーハーベスティングの活用例

現在、光エネルギー、熱エネルギー、さらには振動エネルギーなど、さまざまなエネルギー源を利用することができます。また、IoTデバイスや電子機器などの省電力化に伴い、エネルギーハーベスティングの活用も増えてきています。

 IoT機器の電源

産業分野では、工場の機械の稼働状況を各種センサーなどでモニターし、そのデータを分析して機械の保守・管理に役立てています。これらのセンサーの電源として、エネルギーハーベスティングの活用が進んでいます。

このような活用により、重要な生産設備が稼動していない時間を減らし、故障を未然に防ぐことでメンテナンスの負担を軽減することができます。

環境モニタリング

オフィス環境を例にとると、使われていない会議室の照明がつけっぱなしになっていたり、部屋に誰もいないのにエアコンが動いていたりといった無駄があります。このような無駄は、人感センサーを活用して部屋の稼働状況をモニターし、誰も部屋にいないことが検知された場合に照明や空調をオフにすることで解消できます。エネルギーハーベスティングを人感センサーに活用することで、電池交換などのメンテナンスをすることなく、オフィス環境を監視することができます。

これにより、オフィス(またはビル)全体で使用される電力量が削減され、CO2排出量の削減にもつながります。

医療・ヘルスケア機器

手術室の清潔さを維持するため、ドアの開閉による塵や埃の流入を、電池不要で長時間監視が可能なエネルギーハーベスティングのセンサーを用いて環境モニタリングしているケースがあります。

また、エネルギーハーベスティングは、体温(体内熱エネルギー)を電力源として利用することで、心臓ペースメーカーなどのバイオセンサーを安定動作させることができ、実用化に向けて研究が進められています。

エネルギーハーベスティングの課題

エネルギーハーベスティングへの注目は高まっていますが、一方でさらなる普及・浸透には主に2つの課題があります。

1.安定供給への信頼性の低さ

一つ目の課題は「安定供給への信頼性の低さがあること」があげられます。たとえば、「少量の太陽光でも長期間使える」と言われても、「本当に長持ちするのだろうか」という不安があると、なかなか導入に踏み切れないことです。

2.コスト

エネルギーハーベスティングを活用したセンサーの利用やモニタリングは、初期導入コストの高さが課題となる傾向があります。しかし、これは必ずしもエネルギーハーベスティングが高価であることを意味するものではなく、利用シーンや利用方法によってコスト面での優位性が異なるということが実情です。

たとえば、あちこちに分散しているセンサーの動作を確保するために、作業員がすべてのセンサー設置場所を回って電池交換を行う手間や人件費を考えると、すべてのセンサーをエネルギーハーベスティング対応機器に交換すれば、電池交換の必要がなくなるので、電池交換にかかる手間や人件費を削減することができます。

エネルギーハーベスティングを普及させるための大きな課題は、ある種の誤解をなくすことです。

エネルギーハーベスティングの無線技術「EnOcean」

丸紅情報システムズでは、エネルギーハーベスティングの無線技術である「EnOcean」を取り扱っています。

EnOceanは、シーメンスから独立したベンチャー企業EnOcean社の無線通信プロトコルです。シーメンスはドイツに本社を置く世界有数のテクノロジー企業であり、EnOceanはその中央研究所で開発されたバッテリーレス無線発信技術を活用し、エネルギーハーベスティング(環境発電)の無線技術として開発されました。当初は独自規格でしたが、ISO/IEC 14543-3-10/11で規格化されています。

日本では928.3MHzの周波数帯が割り当てられており、他の通信方式の周波数帯とぶつからないため、干渉のない安定した無線通信が可能というメリットがあります。

EnOceanの無線センサーソリューションは多様であり、丸紅情報システムズのIoTソリューションプラットフォーム「MAIDOA plus」と組み合わせることで、より効果的なエネルギーハーベスティングの活用が可能になります。

ビルディングオートメーション、産業オートメーション、各種環境モニタリングなどでの活用がすでに期待されています。

EnOcean お役立ち資料

EnOceanの紹介資料をダウンロードいただけます。

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