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大型駐車場が抱えるさまざまな課題に、AIを活用した交通DXで解決策を提供

郊外型ショッピングモールや都市型のショッピングセンター 、さらには海外発祥の会員制倉庫型店舗など、広域からの集客を前提とした大型商業施設では、ユーザーは自動車を活用して来店することが多く、大型の駐車場を併設することは必須の要件となる。

しかし、こうした大型商業施設などの駐車場は、周辺道路へ交通渋滞を発生させる要因になるなど、都市型であれ、郊外型であれ、なんらかの課題を抱えており、運営状況によっては顧客満足度の低下や事業そのものの収益性に悪影響を及ぼすリスクも発生しかねない。

そうした課題に対して、最近ではAIを活用した交通DXの推進によって、駐車場サービスそのものの付加価値を高めていこうという動きが活発化している。

本稿では、交通DXを取り入れることによって、駐車場業務の効率化や、駐車場サービスそのものをより良いものにするための取り組みについて、丸紅ネットワークソリューションズ株式会社 AI×IoTサービス部の下川 綾夏に話を聞いた。

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郊外型・都市型商業施設などにおける駐車場の課題

――近年、アウトレットモールなどの郊外型大型商業施設が人気ですが、そうした施設における駐車場運営上の課題や問題点にはどんなものがありますか。また、比較して都市型商業施設についてはいかがでしょうか。

下川 郊外型商業施設の駐車場が抱える問題・課題には、大きく4つあると考えています。1番目は、敷地が広大になるケースが多いために、維持管理コストが高くなりがちだという点です。都市部に比べて土地に関するコストが比較的リーズナブルだとはいっても、土地の有効活用ができなければ収益性を低下させる可能性も出てきてしまいます。

2番目としては、駐車場利用のピークの時間帯の混雑が挙げられます。そもそもこうした施設の利用のピークは、休日やイベント開催などの際に集中することが多く、自動車の入庫・出庫に時間がかかってしまい、そのことが施設に対するクレームにつながったり、施設への顧客満足度の低下につながったりといった弊害を発生させてしまいます。

3番目として、郊外型の商業施設などの場合には公共交通機関のアクセスが悪いなど、うまく連携ができないことが多く、どうしても自動車での来場が多くなり、駐車場の混雑に拍車をかけることになります。

そして4番目としては、郊外型の場合には広大な敷地に平置きの駐車場にしていることが多く、防犯・安全対策においては、防犯カメラや警備員を数多く配置する必要に迫られ、セキュリティコストが高くつくことも問題になりがちです。

これに対して、都市型の場合の問題点としては、 ピーク時の混雑は郊外型と同じ課題ですが、都市型は確保できる敷地が狭小になりがちなため、立体駐車場にしなければならないケースが多く、導入コストが高くなることが大きな課題です。さらにいえば、都市部ではコインパーキングなどの競合となり得る駐車場施設が多く、適切な料金設定が難しいといった課題もあります。

交通DXで、駐車場の課題を解消する

――前項で挙げていただいたような駐車場の課題を解決するには、どうすればいいのでしょうか。

下川 駐車場自体の混雑緩和に有効な対策としては、駐車場管理システムの導入が挙げられます。システム的に、リアルタイムで駐車スペースの空き状況を把握し、それを所定の場所に表示することで、利用者に駐車場の混雑状況などをタイムリーに伝えることができ、混雑緩和につなげることが可能となります。また、事前予約のシステムを導入することも混雑緩和につながり得ます。さらに都市型でも郊外型でも、休日に利用者が集中するような駐車場ではダイナミックプライシングを導入して、需給バランスを考慮した駐車場料金を設定することも有効です。また、駐車場料金の精算に電子決済システムを導入することで、出庫時の精算を円滑化することも混雑緩和に寄与します。

また郊外型の場合、駐車場敷地が広大で、防犯・安全確保の面で警備員の配置などが大変になるという話をしましたが、AIカメラを設置して不審者などを検知できるようなシステムにすることで、警備員の配置を最適化でき、セキュリティを高めながら人件費コストを削減することにもつながります。

TRASCOPE-AIが提供する駐車場ソリューション

――前述のような駐車場管理システムのDXを推進するソリューションとしてのTRASCOPE-AIについて、その概要や機能などをお教えください。

下川 TRASCOPE-AIは、当社が開発したAI解析ソリューションです。このTRASCOPE-AIを駐車場管理システムに活用することで、駐車場が抱えるさまざまな課題を解決することが可能となります。

TRASCOPE-AIでは、エッジ側と、クラウド側の両方にAIが搭載されています。そのため、スピーディな解析・処理が必要な場合にはエッジ側のAIで対応し、即時レスポンスを可能にしています。またクラウド側ではデータを蓄積して、外部のクラウドサービスなどと連携して、データを活用することが可能です。使用可能なアルゴリズムは多様で、自動車のナンバープレートの検知や、顔認証などにも対応できます。

交通DXとしての駐車場ソリューションについては、たとえば駐車場内に設置されたカメラの映像と天候・周辺道路状況などから総合的にAIで解析することで、入出庫の渋滞に関する未来予測が可能になります。 出庫が集中しているような状況において、いま自動車を出庫しようとすると、ゲートを抜けるまでに何分程度要するのかを予測できますので、そうした情報をリアルタイムに発信できます。施設内の掲示モニターなどに「出庫に要する時間××分」といった表示をすることで、利用者に出庫行動を思いとどまらせて出庫渋滞の緩和につなげることはもちろん、施設内の回遊を促進することによる売り上げ向上も期待できます。もちろん、駐車場内の空き状況の表示などにも活用できます。

その他、AIカメラによる異常検知システムによって、駐車場内のセキュリティの強化を図れます。また駐車場の予約システム導入や、ダイナミックプライシングにも対応可能で、さまざまな駐車場ソリューションを提供できます。

豊富な導入実績で、個々の駐車場が抱える課題をワン・ストップで解消

――TRASCOPE-AIを活用して、駐車場の課題解決に成功した事例をご紹介ください。

下川 大型ショッピングモールのイオンモール広島府中様にもご導入いただいています。こちらでは約5,000台の駐車場で、駐車場各フロアから各出口まで49ものルートがあり、それらのルートすべてについて出庫所要時間予測(未来渋滞予測)を行い、施設内のサイネージや、公式ウェブサイト・アプリに表示するようにして、利用者に情報提供します。このシステムによって駐車場の出庫渋滞を緩和でき、また利用者の施設内回遊の促進にも役立っています。

大型商業施設での駐車場管理にTRASCOPE-AIを活用していただく事例が増えており、混雑緩和に効果があった、利用者の滞在時間が増えて売り上げ向上につながったというお声を多数いただいています。

このように当社では、TRASCOPE-AIを軸として、個々の駐車場が抱える課題をワン・ストップで解消することが可能です。提供可能なソリューションは多様ですが、最初は未来渋滞予測機能だけを導入いただいて、その後に予約システムやダイナミックプライシングを導入いただくなど、状況の変化に応じて機能を追加していくことも可能です。

関心をお持ちいただいたお客様には、まずはどんな課題があるのかをヒアリングさせていただき、その課題に応じた過不足のないベスト・ソリューションをご提案させていただくよう心がけており、その提案力には自信があります。駐車場運営に関して課題がおありでしたら、ぜひご相談いただきたいと思います。

TRASCOPE-AIの活用で、多種多様なDXが実現する

――TRASCOPE-AIは、駐車場のソリューションとしての活用以外に、どのような活用可能性があるのでしょうか。

下川 交通DXという分野でいえば、鉄道の踏切に監視カメラを設置し、遮断機が下り始めている状況で、踏切内に人や自動車が滞留していることを検知して、電車を停止させるように通知・発報を自動で行うという活用もされています。また顔認証システムを活用して、路線バスの料金決済を顔認証だけで済ませられるような実証実験も行っています。

交通DX以外の分野・テーマということでいえば、さらに多様です。顔認証システムを活用して、企業等の従業員の出退勤管理システムとして運用したり、商業施設内で利用者がどのように施設内を回遊しているかの人流解析を実施してマーケティングに利用したり、といった使い方もされています。こうした人流解析などは、これまでであれば、調査員が利用者を観察してデータを取りまとめるといった方法で行われていたため、人的労力や調査費用が課題でした。しかしTRASCOPE-AIであれば、施設内に設置してある既設の防犯カメラ等で撮影した映像を活用してAI解析することが可能であるため、対応に掛かる工数やコストの削減を図ることができます。

また、建設現場などで、危険エリアへの人の侵入を検知してアラートを発報するような安全管理DXや、河川の氾濫などを事前に検知する防災DXなど、多種多様な分野での活用可能性も広がっています。今後も丸紅ネットワークソリューションズでは、お客様が抱えられている様々な課題に対して、TRASCOPE-AIを活用した解決方法をご提案していきたいと考えています。

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下川 綾夏
丸紅ネットワークソリューションズ株式会社
AI×IoTサービス部
※所属・職名等は記事公開当時のものです。