1951年設立、照明器具専業メーカーとして豊かな社会づくりに貢献してきたオーデリック。地域密着の提案型ビジネスを展開する同社は、コロナ禍前からリモートワークを導入し、営業の生産性向上を図ってきた。解決が急務となっていたのが、瞬断に伴う生産性低下と、運用負荷の増大だ。同社は、既存VPN製品のサポート終了に伴い、社外で「切れないネットワーク」環境を構築するべく、リモートワークソリューション「Absolute Secure Access」を採用。丸紅情報システムズの技術支援のもと、実際の運用を想定した検証で「瞬断されても、ネットワークが切れない 」ことを徹底的に確認し高く評価、営業中心に導入を進めている。今後、Absolute Secure Accessのアクセス制御によりセキュリティ強化も図っていく。
- 社外で「切れないネットワーク」環境を構築したい
- 通信環境が悪いエリアでも「通信の安定化」を図りたい
- リモートからの業務継続性の向上を図りたい
01[導入の背景]
コロナ禍前から営業にリモートワークを導入
「ネットワークが切れる」ことが重要課題に
照明業界では、デジタル時代に応える技術革新が起きている。既存光源からLED光源への転換が急速に進む。業界を牽引するオーデリックも照明器具出荷のすべてがLED光源搭載品だ。省エネルギーなどの環境に配慮した商品ラインナップが充実。また、生体リズムを整え、健康的な生活をサポートする「CIRCADIAN/サーカディアン照明」、素肌を美しく魅せる「R15(高演色LED照明器具)」、日本各地の伝統技術・メーカーと創る「made in NIPPON」など、暮らしの質を高める“あかり”の提案にも力を注ぐ。さらに、無線通信技術Bluetoothを使って光環境を一括コントロールする「コネクテッドライティング」は、配線工事の必要もなく、リモコンでシーンに合わせた空間を演出できる、革新的な商品だ。
デザイン・設計から自社工場(グループ会社)での国内生産、販売まで一気通貫で行っているのが同社の強みだ。事業領域も住宅、店舗、商業施設、オフィス、リゾートホテル、スタジアム、屋外など幅広い。様々なシーンの空間に最適な照明プランを提案するために、同社では地域密着の営業展開を行っている。
「北海道から沖縄まで営業拠点を配置し全国をカバーしています。電設資材商社、建設会社、設計事務所など、照明器具の導入、設置に関わるお客様のご要望をお聞きし、豊富な商品群の中から最適なソリューションをご提案します。当社の技術力、商品力の価値を最大化するのが営業力です」とオーデリック 情報システム部 情報システムマネージャーは話す。
同社は、コロナ禍前から営業の生産性向上を図るべくリモートワークを導入。「営業は、1日に何件もお客様をまわるため、事務所に戻らず、会社支給のPCを使って社外で社内と同様に業務を行える体制をとっています。営業部門ではリモートワークが定着しています。しかし従来は、快適かつ安定したリモートワーク環境ではありませんでした。社外の通信環境は場所によって異なるため、『ネットワークが切れる』という根本的な課題を抱えていました」(情報システムマネージャー)
02[導入の経緯]
リモートワーク中の瞬断により
生産性が低下し運用負荷も増大
同社において、既存の社外ネットワーク環境ではVPN(仮想プライベートネットワーク)製品を利用していたというが、「ネットワークが切れる」とはどういうことか。同社 情報システム部 情報システム課 主査は説明する。「訪問先や器具設置予定の現場、自宅での利用など社外の通信環境が悪いエリアで社内の基幹システムにアクセスし業務を行っていると、途中で瞬断され、業務を継続できなくなるケースが発生していました。営業担当者がリモートワークで行う業務には、基幹システムの情報閲覧だけでなく、突発的、または早急に対応が必要な受注処理や、注文数などに関するお客様からの変更対応があります。瞬断が生じた場合、情報システム部で基幹システムの在庫修正等の対応を行った上で、営業は通信環境の良いエリアに移動し、もう一度ログインし基幹システムにアクセスしなければなりません。非効率であり、ストレスもかかります」
リモートワーク中の瞬断により、情報システム部の負荷増大も課題となった。「瞬断が起きると、アラートが出る仕組みにしていました。すぐに、情報システム部で誰が作業していたかを調べ、アクセスしていた基幹システムを確認し、入力途中か完了していたかなどの状況を把握。入力途中の場合は、ユーザに連絡し再入力の依頼といった対応が必要でした。情報システム部が瞬断で対応した件数は平均月20件以上、1件あたりの状況把握や対応に約1時間を要しました。また、場合によってはユーザに連絡し瞬断の状況をヒヤリングし、障害の切り分け、要因の分析・対処を実施しました」(情報システム課 主査)
既存VPN製品のサポート終了時期が迫る中、同社は瞬断に伴う運用課題の解決に着手。当初は、基幹システム側で対処する手法を模索したという。「しかし、多くの工数とコストがかかるため、前へ進めない状況の中で部門長が数年前に展示会でもらった製品資料の存在を思い出しました。そこに記載されていたキーワードが『切れないネットワーク』でした。インターネットで調べたところ、丸紅情報システムズに行き着きました。システム側の対応と比べて、ネットワーク側で課題を解決できれば、仕組みとして対策がとれるため大幅な工数削減が図れます。すぐに丸紅情報システムズに連絡しました」(情報システム課 主査)
03[導入のポイント]
丸紅情報システムズの技術支援のもと
「切れないネットワーク」をPoCで徹底検証
2023年4月、丸紅情報システムズは、「切れないネットワーク」を実現するリモートワークソリューション「Absolute Secure Access」を、オーデリックに提案した。「提案の中で『切れない』というキーワード以外に、安定した通信を実現する「通信の最適化」にも魅力を感じました。まさに当社が求めていた製品だったので、ぜひ実際の運用を想定した検証で確認したいと丸紅情報システムズに話しました」(情報システム課 主査)
2023年4月末から5月中旬にかけて、オーデリックは丸紅情報システムズの技術支援のもと検証環境を構築。「丸紅情報システムズにネットワーク構成図を見てもらい、相談しながら検証環境の構築を進めました」と情報システム課 主査は振り返る。
2023年5月中は情報システム部内で「切れないネットワーク」の実力を検証。「わざと瞬断して、本当に『切れないか』、何度も確認しました。Absolute Secure Accessは、仮想IPを見てアプリケーションが動いており、実際には接続が切れていてもアプリケーションは動き続けます。これまでは、瞬断が起きると業務システムの画面が真っ暗な状態になりました。Absolute Secure Accessの場合、瞬断が起きても業務システムの画面は正常な状態を維持し、通信回復すればそのまま業務の継続が可能です。移動中や建物内などロケーション条件によりPocket WiFiの通信断が発生しやすい状況であっても、セッション維持機能があることによって安心して業務が行えます」(情報システム課 主査)
2023年5月末から6月初めまで、営業部門から4名が検証に参加。「切れないだけでなく、体感スピードが速くなったなど、営業の評価は非常に高かったですね。検証に参加した営業担当者から、『本格導入の際には、優先して私のPCに入れてほしい』との声もありました。また、同期の営業担当者からも瞬断に関して『なんとかしてほしい』と言われていたので、『これからは大丈夫』と自信をもって話せます」と同社 情報システム部 情報システム課の担当者は話す。
リモートワークにおける体感スピードの向上は、Absolute Secure Accessの「通信の最適化」によるメリットだ。一般的にリモートワークでの大容量ファイルのやりとりや、オンライン動画を利用するWeb会議の開催時には、通信が遅くなるといったケースがある。Absolute Secure Accessでは、通信環境に応じたデータサイズの調整技術で、通信環境が悪いエリアでも通信の安定化を実現。「Web会議でも、音声や動画が安定しており、従来と比べて品質が違うと、検証に参加した営業担当者も話していました。また、私も検証でAbsolute Secure Accessを使ってみたのですが、従来と比べて接続が完了するまでの時間がかなり短くなっていると感じました」(情報システム課 主査)
04[今後の展望]
PoCの成果を高く評価し営業を中心に全社展開
冗長化構成でリモートワークの業務継続を実現
2023年6月末、同社は検証結果を評価したうえで、営業を中心にAbsolute Secure Accessの全社展開を決断し準備を開始した。「必要な設定を施したかたちで、Absolute Secure AccessのアプリケーションをユーザPCに展開 する方法について丸紅情報システムズに相談しました。ユーザPCへの配布は、AD(アクティブ・ディレクトリ)のグループポリシーを使って、Windowsログオンと同時に行われ、ユーザは意識することなくアプリケーションがインストールされます」(情報システム課 主査)
Absolute Secure Accessにより、リモートワークにおける「切れないネットワーク」環境を構築できたことで、瞬断による業務システムへの再接続などの手間もなくなり、営業担当者の生産性が向上。また、瞬断対応に要していた情報システム部門の負荷も大幅に軽減され、その分、IT戦略の立案などに集中できる時間の創出が可能だ。
今回、同社は快適なリモートワーク環境の実現とともに、社外での業務継続性向上も図っている。「Absolute Secure Accessを稼働させるサーバに関して、地理的に離れた場所で冗長化しています。ポイントは地震等の災害時にも国内のあらゆる拠点からAbsolute Secure Accessを介して業務継続が可能であるという点です。また、副次的効果としてAbsolute Secure Accessを冗長化構成にしたことで、レスポンスタイムの閾値を超えた場合、もう1台のサーバに接続先が自動的にシフトされるため、通信負荷が急速に増大した場合も安定した通信を確保できます」(情報システムマネージャー)
今後の展望について情報システム課 主査は話す。「今回、社外ネットワーク環境を整備できました。今後は、Absolute Secure Accessのアクセス制御機能を使って、アンチウイルスソフトの有無や更新期限を確認し要件を満たしたデバイスのみ接続を許可させるといった、セキュリティ強化を図っていきたいと思います。PoC、ユーザへのアプリケーション配布、冗長化など、丸紅情報システムズには導入に向けた各フェーズでいろいろ相談にのってもらいました。本格運用の技術支援はもとより、これからも当社の立場に立った様々な提案、きめ細かいサポートをお願いします」
“あかり”を通じて明るい未来を創造するオーデリック。丸紅情報システムズは、Absolute Secure Accessの提供と技術支援を通じて、リモートワークの快適性と運用性の向上を図り、同社のさらなる躍進に寄与していく。