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さくらインターネット株式会社様

リスクヘッジとコストパフォーマンスを両立。新しいDR(ディザスタリカバリ)サービスの誕生。

甚大な被害をもたらした東日本大震災。大震災のあと、事業継続が困難になった企業も少なくない。多くの企業は従来の災害対策を再点検し事業継続を強く意識した取り組みを進めている。事業継続で重要なポイントとなるのが災害時にシステムを復旧・修復するDR(ディザスタリカバリ)だ。


日本を代表するデータセンター事業者、さくらインターネットは災害リスクの低い北の大地から新しいDRサービスの提供を開始した。NetAppストレージの機能を利用することでコストパフォーマンスに優れたDRを実現し災害時の早期復旧を実現する。

事業継続の実現に欠かせないDR(ディザスタリカバリ)

現在の地震学では地震の規模やその発生日時を正確に予測することはできない。しかし地震発生のリスクを示す指標があれば、災害対策の取り組みを具体化していく進捗度合いは異なってくるだろう。政府・地震調査研究推進本部(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)は、「同じ場所で同じような地震がほぼ定期的に繰り返す」と仮定し、地震発生確率値を含む長期評価を公表している。

長期評価(2015年1月14日での算出)では30年以内に三陸沖北部(マグニチュード7.1から7.6前後、90%)から南海トラフ(マグニチュード8から9前後、70%)まで太平洋沿岸において高い確率で巨大地震が発生するリスクのあることを指摘している。

2011年3月11日に起きた東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は、これまでの災害対策のあり方を根底から覆した。物流の停滞、電力の不足、通信手段の途絶に加え、重要データの消失が社会に与えた影響は大きい。津波によりコンピュータ室やPCが流されてしまい、企業のビジネスや市町村の住民サービスは継続が困難となった。

多くの企業や自治体は東日本大震災の経験を活かし、事業継続を重視した災害対策を進めている。進展するIT社会において災害時にシステムを復旧・修復するDR(ディザスタリカバリ)は事業継続に欠かせない。

DRは、遠隔地に重要データの複製をつくっておき、災害時にシステムが利用できなくなっても代替のシステムで複製データを使って事業継続を実現する。普段利用するシステムと遠隔地に代替用として同じシステムを運用することが理想だが、多くのコストがかかることからリスクヘッジと投資のバランスが大きな課題となっている。

2015年1月、コストパフォーマンスに優れ、早期復旧を実現する新たなDRサービスが誕生した。日本を代表するデータセンター事業者、さくらインターネットが創造し災害リスクの低い北の大地から提供していく。

災害リスクの低い石狩データセンターのロケーションに企業が注目

雪山が道路端に積まれた中をタクシーで走り抜けると、巨大な四角い建物が見えてきた。近代的な体育館のようにも見えるデザインはいたってシンプルだ。なぜ、さくらインターネットは北海道の石狩地域にデータセンターをつくったのだろうか。

「2008年、都内のデータセンターが飽和状態となったため、郊外型データセンターをつくるべく日本全国をまわって候補地を探しました。北海道石狩の地を選択した理由は、東京ドームとほぼ同じという広大な敷地によるスケールメリットで圧倒的なコスト競争力を実現できるからです。分棟式により現在は2棟ですが、最終的には8棟を建設し最大4,000ラックまで増設する計画となっています」とビジネスディベロップメント事業部 シニアチーフ 町田知紀氏は話す。

さくらインターネットは、1996年に現社長の田中邦裕氏が高等専門学校在学中に学内ベンチャーとして創業した。高専生だった田中社長自身がサーバの置き場所に困っていたことが事業を始めるきっかけになったという。「どこより低価格で、どこよりも高品質なサービスを実現したい」同社の企業理念はデータセンターづくりにも活かされている。

東日本大震災後、石狩データセンターはスケールメリット以外に、災害対策の観点で多くの企業から関心を集めた。「災害対策の事業継続を目的に石狩データセンターを利用したいという企業からのお問い合わせが急増しました。政府・地震調査研究推進本部が公表した長期評価において、石狩地域は30年以内に震度6以上の地震の発生する確率が0.1%から3%と極めて低く、また津波についても陸上での最高到達点4.7mという数値に対し、石狩データセンターの建設地の地盤高は5.5m以上のため津波による影響も少ないといえます。」(町田氏)

北海道ならではのメリットは災害リスクの低さだけではないという。「これからサーバルームをご案内いたしますが、コートを着ていったほうがいいですよ。エネルギー効率を高めるために外気を活用した冷房を行っていますから、外にいるのと変わりません。」とビジネスディベロップメント事業部 上級エンジニア 榎本尚木氏は話すと立ち上がった。

北海道の冷涼な気候を活かした外気冷房で消費電力量を削減

1人1人、セキュリティゲートを通り、サーバルームに入る。そこには北海道の2月の冷たい空気が流れていた。「低温の外気とサーバからの排熱を混合し、最適な温湿度の冷却風をサーバルームに供給しています。」データセンター運営に大きなコストを占める冷却用の電力消費量を、北海道の気候を生かし他のデータセンターでは例が無いほどに低く抑えている。

石狩データセンターと石狩地域の暮らしで使う電力ピークは逆なのだと榎本氏の説明は続く。「北海道で暮らす場合、夏の冷房はあまり必要ありませんが、冬の暖房は不可欠で多くの電力を消費します。一方、石狩データセンターでは、冬はほとんど外気冷房だけでサーバルームの空調が行えるため電力消費量は少なく済みます。電力ピークが重ならないため、震災以降の電力不足に影響をうけません」

空調方式はノウハウを蓄積するために天井吹き出し方式と壁吹き出し方式を採用している。またラックの積み方なども様々な工夫が施されている。

ところどころで工事中のサーバルームがあった。非常用発電機やUPS(無停止電源装置)をサーバルームごとに設置するモジュール型のため需要動向に応じて拡張できるという。モジュールごとに企業のニーズに合わせた対応が行える点も利点となる。

ケーブルが血管のように各ラックを通っているのも印象的だ。「通信回線は当初、太平洋経路に2本の予定でしたが、東日本大震災後、太平洋経路と日本海経路の2経路で冗長性を図りました。」(榎本氏)
災害リスクの低さ、スケールメリット、優れたエネルギー効率などDRに最適なデータセンターだが、サービスを利用する企業にとって遠地となるため運用面が課題となった。「データセンターの施設やスペースを提供するハウジングサービスは、お客様がサーバなどを所有しており運用管理が必要です。システムトラブルが発生したときもお客様の情報システム部門が短時間で駆けつけて対応しなければならず、石狩データセンターのハウジングサービスを利用できる企業は限られます。」(町田氏)

企業の事業継続のニーズにハウジングサービス以外で応えることはできないだろうか。2014年夏、同社のストレージに詳しいディレクターが石狩データセンターを活用した新しいDRサービスを企画した。「DR with NetApp」は、DRを実現する上でリスクヘッジと投資のバランスという課題の解決を目指す。

NetAppストレージの機能+ホスティングサービスでコストを抑制

「DR with NetApp」は、その名が示すようにNetAppストレージの機能を利用してDRを実現する。NetAppストレージを導入している企業をサービスの対象としている点が特徴だ。同サービスで使用するNetApp FASストレージは高信頼性や高可用性、データ保護機能に優れたファイルサーバとして世界はもとより日本国内でも導入が拡大している。

NetApp FASストレージにはDRを実現するためのSnapMirror®機能が標準で搭載されている。データ圧縮によりデータ転送時のネットワーク帯域幅の使用率を軽減できるなど優れた機能を有するのだが、DRサイトを構築するコストがネックとなり活用されていないのが現状だ。

「お客様が自社の設備やハウジングサービスを利用してDRを実現する場合、電力や回線、スペースなど様々な要素を考慮しなければならず、現地での構築作業も必要となるため多くの初期導入コストがかかります。」(榎本氏)

DRサイトの構築に要するコストを抑えられたら、より多くの企業がSnapMirror®機能を使って事業継続を実現できるのではないだろうか。「企業の自社システムで導入しているNetApp FASストレージと当社のホスティングサービスを組み合わせて利用する『DR with NetApp』は初期投資が不要です。またサービスとして利用するため減価償却も発生しません。」と榎本氏は話す。

ハウジングサービスでも運用は自社で行うか、外部に委託するか、いずれにしても運用コストは発生するが、「DR with NetApp」はサービス料金の中に運用コストが含まれている。しかし、運用に関しては企業の重要なデータを扱うため、コストセーブだけを考えればいいというものではなく、運用を支援するサポートが重要になると榎本氏は強調した。

「当社はデータセンター事業者であり、ストレージのスペシャリストではありません。『DR with NetApp』のビジネスパートナーとして丸紅情報システムズを選択したのは、NetAppストレージの豊富な導入実績と高い技術力を評価したからです。丸紅情報システムズに石狩データセンターのNetApp FASストレージの運用はもとより、サービスを利用するお客様のサポートを行ってもらうことで、お客様に安心を提供することができます。」

企業向けサービスであることからNetAppストレージの最新OSである clustered Data ONTAP(略称:cDOT)によりマルチテナントを実現し、複数の企業がNetApp FASストレージを共用してもそれぞれのシステムの独立性を確保している。これにより、あるシステムのトラブルが他に影響を及ぼすことはない。また暗号化とVPN(Virtual Private Network、仮想プライベートネットワーク)による安全なデータ転送も実現している。

今後はNetAppストレージの最新OSへの移行支援も重要なテーマ

NetApp FASストレージを導入していない企業は「DR with NetApp」を利用できないのだろうか。町田氏は次のように答える。「当社のデータセンターインフラとセットになった1社専有型クラウドストレージサービス『ストレージ専有サービス with NetApp』と合わせてご利用いただくことができます。同サービスはストレージを保有することなく手軽に導入できる利便性から、特定のプロジェクトやNetApp FASストレージの更新におけるデータ移行などで利用されています。」

今後のテーマとして町田氏はBCP(Business continuity planning、事業継続計画)を容易に実現できるサービスづくりを挙げた。加えて、データセンターのリソースを活かしNetApp FASストレージのOSを7-modeからcDOTへ移行する支援も行っていきたいという。「最近はオンラインでリソースを使うことにエンジニアの業務がシフトしてきています。IT機器を所有しないアセットレスのニーズに応えるサービスを開発することでこれからもお客様のビジネスの成長に貢献していきたい。」と思いを口にする。

石狩データセンターの外に出るとき、ラックに積まれたコンピュータの表示ランプの点滅が脳裏に浮かんだ。それはまるでインターネット社会の鼓動にように思えた。

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