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株式会社プラネット様

「絶え間ない品質の作り込み」テスト自動化による次世代ものづくり

2014年4月1日、消費税率が5%から8%に引き上げられた。専門店向けPOSシステムを提供しているプラネットは
1年前から消費税率変更への準備を進めていた。失敗が許されないため、テストには4ヵ月の時間をかけ、人海戦術で手厚く行ったが、テスト自動化の必要性を痛感したという。POSシステムのビジネスはシステム提供後から本格的にスタートする。

決済手段の多様化、インバウンド(訪日外国人観光客)対応など、時代のニーズに応じて機能追加が必要となる。専門店の成長を支えるべくPOSシステムを進化させながら、いかに品質を高めていくか。2016年、消費税率変更と同等のバージョンアップを実施した際、繰り返し操作などのテストを自動化し夜間に実行することで、より密度の高いテストを実現できた。人とテストツールの両輪で更なる品質向上への取組みは続いていく。

POSシステムの品質は店舗の信用に直結する

買物客と金銭のやりとりを行う店頭業務ではミスが許されない。大きな責任を担う店員をサポートするPOSシステムは、商品バーコードを読み取り、自動的に合計金額を算出し、支払金額を買物客に知らせる。万が一、システムトラブルが起きればビジネスの機会損失のみならず信用失墜につながりかねない。安定稼働のために品質を追求していく中で、避けて通れないリスクがある。法制度対応や機能追加などのバージョンアップは常に品質の担保を求められる。

「当社では3ヵ月に1回、バージョンアップを行うケースもあります。システム改修において大事な観点は、改修した機能はもちろん、それ以外のどこかに影響がでていないか、という点です。」とシステムソリューション事業本部 製品管理本部 本部長 三木規史氏は話す。

1983年の創業以来、プラネットは流通小売店に対してITソリューションとトータルサービスを提供してきた。同社の主力製品が自社開発のPOSシステム「ATEMS」だ。スポーツ、雑貨、アパレルなどの専門店や飲食業向けの同製品はクラウドサービスでの提供が基本となる。

「当社のデータセンターで24時間365日のデータ運用処理サービスとヘルプデスクサポートを提供しています。システムだけでなく、日々の運用も含めたワンストップサービスが当社の強みです。お客様は、資産としてシステムを所有することなく、店舗運営や経営管理のためにBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを利用したデータ分析など様々なサービスを利用できます」とシステムソリューション事業本部 管掌取締役 鹿山貴弘氏は話す。 IT技術の進歩や社会の変化に応えるために、POSシステムも進化してきた。POS専用機だけでなく、タブレットPCも端末として利用するケースも増えている。またクレジットカード、電子マネー、セルフ会計など決済手段の多様化や、2020年東京オリンピック開催に向けて免税や多言語化への対応も求められている。

近年では、オムニチャネル(実店舗とオンラインショップの間の垣根を取り払った販売戦略)やEC(エレクトロニックコマース、電子商取引)との連携も欠かせない。「ATEMS」は同社のクラウド上で他社システムと連携し付加価値の高いサービスを提供できる点も強みだ。「例えば、実店舗とオンラインショップの購入履歴や購入ポイントを一元管理することでリアルとバーチャルの両面での販売促進につなげることができます。またクラウド上で蓄積された小売店の顧客情報をメーカーにフィードバックする取り組みも進めています。流通業の川下と川上の間の架け橋の役割を果たしていければと考えています」(鹿山氏)

POSシステムが複雑化する中、バージョンアップ時の品質を支えるテストの重要性が高まる一方で、作業負荷の増大は深刻な課題となった。同社は品質と効率の両面を向上するべくテスト自動化ツールを導入したが、2014年の消費税率引き上げへの対応で自動化できたのは1割に過ぎなかったという。

人海戦術の限界とテスト自動化の必要性を痛感

2014年4月1日、消費税率が5%から8%に変わった。17年ぶりの引き上げとなる1年前の2013年から同社は「ATEMS」の消費税率変更への対応を開始した。同製品の導入企業の約8割がカスタマイズを行っているという。カスタマイズした分だけシステム改修は発生するが、同社はお客様に寄り添ってつくりあげることにこだわりを持っている。「専門店ごとに扱っている商品や使いたい機能、販売戦略などが異なっており、それぞれのニーズにしっかりと応えていくことでお客様のビジネスに貢献していきたい」(鹿山氏)

2014年4月1日、日付が変わる瞬間にATEMS導入企業200社、店舗数350店舗のPOS 4,500台すべてが一斉に正しく切り替わらなければならない。準備期間の中で4ヵ月という時間をかけ、カスタマイズしたそれぞれのシステムに対し改修による影響範囲を調べ、社内に本番相当の環境を用意しテストを実施した。「一発勝負で、なおかつ失敗できないことから、限られた時間の中でテストを手厚く行うことが必要でした。事前に導入していたテスト自動化ツールに期待していたのですが、自動化できたのは1割程で、残りの9割は人手で行いました」(三木氏)

既存のテスト自動化ツールは、テスト対象とする端末(POS専用機など)にソフトウェアをインストールするため利用に制限があった。例えば、システムのバージョンアップ試験では端末の再起動を伴うケースもあるが、テストツールも一緒に再起動されてしまうためテストが途切れてしまい一気通貫のテストができない。再起動後の動作確認までがテスト範囲となるからだ。人海戦術で消費税率変更への対応は乗り切ったが、テスト自動化の必要性を痛感した三木氏は真剣に製品を探し続け、2016年、ついに理想の製品と出会った。「eggplant」は従来のテスト自動化ツールとは一線を画すものだった。

リモート接続により本番に近い環境でのテストを実現

テーブルの上にはケーブルで結ばれた2台のPCが並んでいた。1台はテストの管理用PC、もう1台がPOS専用機に見立てたPCだ。eggplantを使ったATEMSのテストのデモが始まった。管理用PCの画面にはプログラムのコードが流れていく。それに合わせてもう1台のPCでは画面上で自動的に操作が進む。eggplantはリモートから対象の端末を操作し、画像認識によりテストを行うため端末にソフトウェアはインストールされていない。1台のPCが再起動状態となっても、管理用PCは動き続けていた。再起動から立ち上がったところでテストは終了した。「リモートで接続してテストを行うという点が画期的でした」と三木氏は話す。

「POS専用機はPCのように様々なソフトウェアのインストールを前提としていません。POSのアプリケーションだけが動いている状態でテストを行いたかったのですが、これまではできませんでした。より本番に近い環境で実施できるということは非常に大きなメリットがあります。また単体試験レベルだけでなく総合試験フェーズにも対応できると気づいたときは衝撃的でした」

eggplantを利用することで、例えばPOSで売上情報の入力を行い、接続先を本部PCに切り替えて売上げが正しく上がってきているかどうかを確認するといった一連のプロセスの自動化が可能となる。「テストに関する一通りのシナリオをすべて自動化できるのではないかなど、アイデアもどんどん広がっています。またソフトウェアをインストールしないため管理PCやPOS端末のOSやアプリケーションに依存しない点も活用シーンの拡大につながりますね」(三木氏)

昼間は人が中心、夜間は自動化で密度の高いテストを実現

2016年にeggplant導入後、消費税変更と同じくらい大規模な改修作業が発生したが、6人月(1人月:1人が1ヵ月作業すること) 分のテスト作業の自動化を実現できた。作業が早く終わることを目指しているわけではないと三木氏は強調する。「テスト担当者がテストを行いながらも専門性の高い能力を発揮できるテストと、回帰試験など繰り返し行う操作など自動化に適した部分との切り分けができました。昼間は人が作業を行い、夜間はeggplantに交代する。同じ期間でも従来よりも密度の高いテストが行えるようになりました」テストをスムーズに進めるためにはサポートも重要なポイントとなる。「海外の製品を利用した際、問い合わせをしてから回答が返ってくるまでにたいへんな時間がかかり、困った経験がありました。丸紅情報システムズさんには、問い合わせに2営業日で回答していただいており、とても助かっています」(三木氏)

開発の意識も変わってきたという。開発したら夜間にテストを行い、翌朝にはその結果を反映し改善する。この好循環な開発サイクルは開発品質の向上とともに、手戻りが少なくなることから生産性の向上にもつながっていく。eggplantは誰でも簡単に使いこなすことができるため、テスト利用以外にも活用範囲が広げられる。仕組みを聞いた開発者がWindows上でのシステム環境構築の自動化に利用できないか、検討しているという。

「ATEMSのビジネスは、システムを提供して終わりではなく、そこから始まります。時代のニーズに応えながら品質を高めていくためにeggplantは今や欠かせない存在です。私たちは、これからもより良い製品とサービスの提供を通じてお客様とともに歩み、成長していきます」(鹿山氏)

暗闇の中でPOS専用機が自動的に操作されている。正しく動いているか。エラーは発生していないか。買物客と店舗の信頼に品質で応えるために、深夜のオフィスで無人のテストは続く。

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